夜空に浮かぶ月を見てキルアを連想したことは何度かある。満月でも三日月でも鈍く光るその色を見ているだけで私は勇気付けられた。
せっかくあの家から出られたのだから、たまには感謝の一言というか、自分の気持ちを伝えるくらいはした方がいいのかなと思う。ちらりと斜め下に視線を向けて、すぐ前に戻した。月を一緒に眺めるのは初めてだ。少しだけ緊張する。
「……月、綺麗だね」
「明日新月だけどな」
けろりと返されたセリフに格好が崩れた。ああ、何故わからなかったのだろう。キルアが文学的な返しをしてくるわけがないのに。チョコロボ君を食べながら月見をするお子ちゃまに、切羽詰まった状況でもない今、言葉の真意を考えるという選択肢はない。
「うん……キルアのそういうとこ好きだよ」
「はあ? 何だよいきなり」
お菓子ならやらねーぞと背中に隠されたチョコロボ君に脱力する。これくらいの反抗心ならかわいいものだ。微笑みだけを返して鈍く光る月を見上げる。
願わくばもう少しだけ、この子と一緒にいられますように。
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