飛び散る血がこわい。
 生を実感させない死体がこわい。
 平然と現場にいる犯人がこわい。

 殺人現場の、全てがこわい。

 部屋の隅でみっともなく震えていると、「おい」と小声で話掛けられた。警察に連行されていく犯人をなるべく視界に映さないようにしつつコナン君を見上げれば、頬に手を添えられ、それに縋り付くように手を握る。コナン君は慣れたように溜息を吐き、空いた片方の手で自分の頭をガシガシ掻いた。

「あー……一応聞くけど、大丈夫か?」
「むり」
「だろうな。待ってろ、なんか飲み物もらってくる」

 手を離してどこかへ行こうとするコナン君を引っ張る。元の姿ならいざ知らず、小学生でも小柄な部類に入るコナン君はすっぽりと私の腕の中に収まった。苦しくない程度に抱きしめてほっと息を吐く。

「コナン君あったかい……」
「っあのなぁ! 毎回いきなり抱き着くのやめろ! あと匂い嗅ぐな!」
「いきなりじゃないとコナン君すぐ逃げるから」

 暴れるコナン君の首筋を嗅ぐと、さっきまでの血生臭くて気持ち悪い感覚がすーっとなくなる。落ち着く、と息を吐くとコナン君の動きが止まった。

「お、お前オレ以外の奴にもこんなことしてんじゃねーだろうな」
「してないよ。コナン君の匂いだからいいの」

 子供の体というのはどこもかしこも柔らかい。少しだけ抱きしめる力を強める。柔らかい。気持ちいい。落ち着く。
 知らず閉じていた目を開けると真っ赤な耳が見えて、あ、と思うと同時に、コナン君は精一杯の力で私の腕から逃げた。もう少し抱き締めていたかったと眉を下げる私とは正反対に、コナン君は赤く染まった顔で私を睨む。あんまり怖くなかった。

「息が荒いんだよ! 変態かオメー!」
「コナン君あと5分ぎゅってして」
「話を聞け!」






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