内緒話に糸電話は都合がいいものだった。今後のハウスでの行動やノーマンの出荷阻止についての話し合いがひと段落して、そろそろ寝なきゃと思っていたとき。少し迷うようにレイが言葉を紡いだ。

「お前、絶対スコア落とすなよ」

 息が震えた。糸電話でよかったと心底思う。
じゃなきゃ怯えた顔をした私をレイは怒っただろうから。自信持てよって。

「……やだな。落とさないよ」
「どうだか。時々エマより危なっかしいからな」
「糸電話じゃなかったら殴ってる」
「言ってろ」

 鬼を見たことはない。エマやノーマン、レイが体験した恐ろしさを私は知らない。
 でも大好きなママではなくレイ達の話を信じたのは私だ。死にたくない。私はまだ皆と笑っていたいから。

「大丈夫だよ。なんとかなる」
「お前なあ、そういうところが」
「赤い糸、見えるでしょ?」

 レイと私を繋ぐ糸をピン、と弾く。気難しそうなレイの顔を想像して笑った。

「……状況考えて言えよ、バカ」
「じゃあ早くそういう状況になるようにしなきゃね」

 おやすみ、と一方的に言って紙コップから耳を離す。“そういう”状況になるまで、家族愛とも恋愛とも言えるこの気持ちを閉じ込めておくために。






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