夜の野外訓練が終わって、その帰り道でのことだった。といっても敷地内なのだけど、うちの家の庭は広いから、弟と二人、のろのろと歩いていた。
「あ、流れ星」
夜空を指指しながら呟くと幼い弟は「なにそれ?」と聞いてきた。その弟と繋いでいない方の手で人差し指を立て、まるで先生になったような気持ちになって説明する。
「夜になると星が見えるでしょ? その星が空を移動してる様子を流れ星っていうの。今見えたのがそれ」
「ふーん」
「流れ星が流れてる間に願い事を3回唱えると叶うんだよ。迷信だけどね」
苦笑いしながら言うと弟はまたしても「ふーん」と興味なさげに返事をした。まったく、教えがいのない弟だ。しかし可愛げのないところが可愛いのだから、ブラコンと呼ばれても仕方ないのかもしれない。一番上の兄には負けるけれど。なんせあの人の愛は重すぎる。
訓練を思い出して身震いしそうになる体を叱咤してこちらの様子を伺う弟を見る。へらりと笑うとツンと顔を逸らされた。
「キルは何か願い事ある?」
「……うん」
「そうなんだ。なにかな。お菓子いっぱい食べたいとか?」
この前もいっぱい食べてゴトーに注意されてたねと揶揄うと不機嫌そうに口を尖らせる。お菓子のせいで夕食が入らなかったら怒られるからゴトーは注意してくれたというのに。我が家は食事でさえも訓練の一環なのだから。
機嫌を直して、と指で手の甲を軽く叩く。
「私は1ヶ月くらい自由になりたいな。部屋でダラダラしたり、美味しいもの食べに行ったり、行きたいとこに一人で行ったり……あんまりこういうの言っちゃだめなんだけどね」
口元に指を当てて「内緒よ」と笑う。キルアは小さく頷いて、そのまま俯いてしまった。いつもとは違う様子に立ち止まって顔を覗き込む。どうしたの、と私が声に出すより先に「……オレも」と吐息のように吐き出す。
「オレも、自由になりたい」
「……じゃあ、二人の秘密ね」
叶えてあげるとは、とても言えなかった。姉として不甲斐ないけれど、将来への期待で雁字搦めにされている弟を連れ出すなんて私にはできない。
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