人と話すのは好きだ。誰とでも仲良くなれるなんて能力はないけれど、ある程度のコミュニケーションは取れると自負している。なにより誰かと会話ができるということが嬉しいし楽しい。
その誰かの中でも“お気に入り”は存在する。しかしその“お気に入り”は私にとって大好きでもあるが大嫌いでもあるのだ。だって、私以外の人と話しているとどうしようもなく嫉妬してしまうから。私がいるのに、違う人ばかり見ているから。
その感情は恋愛なのかもしれない。はたまたただの子供じみた所有欲か、私にはわからないし興味もないのだけど。ただひたすら気に入らないという思いだけはあって、でも“お気に入り”には嫌われたくないから口には出さない。
「どうしたの?具合悪い?」
後ろを歩いていた私を“お気に入り”が振り返る。考え事に没頭するあまり歩みが遅くなっていたらしく結構な距離が空いていた。ごまかすようにへらりと笑って駆け寄る。
「ううん、なんでもない」
「本当に?ユキはすぐ溜め込むんだから、具合が悪いならちゃんと言ってね」
「うん。ありがと」
ああ、ほら、話しかけてくれただけで嘘くさい笑顔が心からの笑顔になる。嬉しくて嬉しくて、この存在を抱き締めたくなる。いっそのこと大好きだとでも言って手を繋ごうかと思う。
まあ、そうさせない邪魔者がいるから無理なわけだけど。
「おいゴン、早く行こうぜ。飯食いっぱぐれる」
「あっ待ってよキルア!」
“お気に入り”の“お気に入り”は非常に気にくわない。というかシンプルに嫌いだ。私が“お気に入り”に接するようにとまではいかないが、それに近い態度で“お気に入り”が私じゃない奴に笑いかける。ムカつく。いなくなればいいのに。
異性の私にはできない手を繋ぐ行為も、そいつは簡単にやってみせる。繋ぐというか腕を掴んでるだけだけど、私にはできない。“お気に入り”とはそれなりに長く付き合っているけれど、距離感の詰め方を私は知らないのだ。
「ユキ! 行こう!」
「……うん!」
引っ張られながらも私を振り返る“お気に入り”のことは大好きだ。
でも掴まれた腕を振りほどいて私の元へ来てくれない“お気に入り”は大嫌い。
我ながら矛盾した想いだと思う。まったく面倒くさい感情ではあるが、“お気に入り”が“お気に入り”である限り、私はずっとこの想いをずっと抱えて生きていくんだろう。
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