腹の底に響くような音だ。
 遊真が強く踏みしめた地面は割れており、震度2くらいの地震が起きたような揺れに襲われた。小さな身体から発せられる威圧感は戦闘のせの字も知らない一般人には耐えられなかったのだろう。びっしょりと冷や汗をかいて尻もちをついたまま、化け物でも見るように遊真を見上げている。
 遊真はそんな男たちの視線を意に返さず、にっこり笑って私の服の袖を軽く引っ張った。これ以上追い詰める気はないらしい。さすが、引き際を心得ている。

「行くぞ、ユキ」
「はーい」

 良い子の返事をして未だ動けない男たちの傍を抜ける。遊真が通るときに顔を強張らせていた顔が、つい数分前までしつこく絡んできた姿と別人のようで可笑しかった。

「やっぱりおれも傘を持ってくるべきだったな」
「いやー、あの手の男は関係ないと思うな」
「……まあ追い払えたらいいか」
「そうそう。かっこよかったよ」
「それはどうも。でも修には内緒にしてくれ。目立つと怒られる」
「あははっ。いいよ、助けてくれたお礼」

 玉狛支部の白い悪魔。緑川の紹介で仲良くなった空閑遊真は、見た目は子供、頭脳は大人なタイプだと思っていた。しかし意外とそうでもないのかもしれない。
 きっと彼のチームメイトにバレたところで、驚きはしても怒ることはないだろう。遊真がいなければ、たぶん私が実力行使に出ていた。それくらいしつこかったのだから。

「遊真、それ似合ってるね」
「サンキュー。もう着ないから見納めてくれ」
「着ないの? てるてる坊主みたいでかわいいのに」
「ユキは性格が悪いな」
「ふふふ」

 拗ねる遊真に笑いでごまかす。大人っぽいけれど子供で男の子な面もあると知ったからには、今までとは少しばかり対応も変わってくる。ときめいてしまったのだ、仕方ない。
 私の持つ傘に遊真が入ってくる。傾けると「いいよ、濡れるだろ」と戻された。

「……!!」
「? どうした?」
「いやちょっと心臓が」
「医者に診てもらうか?」
「悪くはないから大丈夫」
「?」

 片手で顔を隠す私を、遊真がレインコートを脱ぎながら不思議そうに見た。






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