文字通り世界を渡るという不思議体験をしてしばらく経つが、いまだここには慣れない。一体何なんだ、ここは。絶海の孤島だから帰る方法を探すこともできないし何故だかお人好しが多いため日本人特有の童顔の私は夜遅くまで出歩いていると早く帰れと促される。これでも四捨五入したら20だというのに。まったく腹立たしいが一般人を消すのは裏社会のルールに反する。まともな人生は歩んできてないが、それくらいの常識はあるつもりだ。
 ……がしかし、最近は特に腹正しい奴が一人。

「ユキ〜!どこ〜!?」

 ほら来た。
 舌打ちをひとつして声が聞こえた方とは逆へと走り出す。本当に、腹立たしい。自慢するわけではないが、何故裏社会の何でも屋として恐れられた私が、あんな子供一人から逃げなければならないのだ。

「ユキ見っけ!」
「はあっ!?」

 しかし子供だからとて侮ってはいけない。この子供——ゴン=フリークスは私がどこにいようと見つけ、追いかけ回す。「匂いや勘でわかるんだ!」と憎たらしいほどの笑顔で言われたとき半殺しにしてやろうかと思った。
 私だって前の世界では裏社会の人間だったのだ。いくらゴンの五感が優れていようと、体臭はできるだけ消してるし気配だって無意識に消している。気づかれるようなヘマはしてないはずだが——いや、それは言い訳だ。要するにゴンという子供は天賦の才なるものを持った特別な子供なのだろう。

「追いかけてくんな!」
「やーだよー!」

 ……相手に殺意を抱かせる面でも才を持ってるらしい。
 思わず出そうになった手を引っ込め、近づいてくる気配から逃げぬくため走ることに集中した。






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