ああ、またこいつはその手を赤く染めるのか。
子供のように俺を一人占めしたいがために。

「叔父貴」

血の舞っている路地の中であいつが笑顔を浮かべながら立っていた。
地面には先ほど俺に声をかけてきた見ず知らずの男が息もせずに臥している。
しかし、心には何の感傷もわかない。
こんな光景を見慣れたと感じる自分が酷く冷血に思えた。

「駄目だろ、叔父貴?」

いつもと変わらぬ優しい声音で諭すようにそう告げる。
少しずつ近づいてくる、あいつの顔。
気付いた時には、赤を散らした頬が目の前にやってきていた。

「叔父貴は俺のなんだから」

笑顔で俺を抱きしめながら戯れに口付けをしてくるこいつに、また俺は何も言うことが出来ずなすがまま。
きっともうすでにこいつの人格は歪みに歪んでしまったのだろう、あの忌々しい日のことが頭に過り恐怖がよみがえる。

「愛してるよ、叔父貴」

抱きしめる力が強くなった、まるで子供が自分の所有権を主張するかのように。
この義理の甥が憎いというわけではない、かといってこれを愛と言っていいのかもわからない。
もう、訳がわからなくなった頭ではろくな思考が働かず。
もう、罪の意識を抱くことすらも億劫だと俺は全体重をあいつの肩に預けた。



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