「あ……暑い……」
まるで捻り出したかのような掠れた声が空に消える。何処かでギーギーやかましく鳴く蝉の声を聞きながら、縁側で団扇を扇ぐのはトレーナーの家で涼をとろうとする姫羅。氷タイプの彼女にこの猛暑は辛いらしい。犬のように舌を出しうだった表情でタライの水に足を突っ込む姿はお世辞にも年頃の娘とは思えなかった。
「う、ん……?そんな暑いかなぁ……」
一方、隣に座る男は頬に汗一つかいておらず、それらしいことと言えばアイスバーを嘗めていることのみ。そんな彼の横顔をじとりと見上げながら少女は心底理解できないものを見るかのように顔を歪ませる。タイプが違うと、こんなところまで相容れないものなのだろうか。
「……あり得ない……あり得ないよ王鞍さん……なんでそんな台詞が出てくるの?」
「え、なんでだろう……光合成しやすいから?」
「ああ、確かに夏場に王鞍さんの隣にいると凄い空気美味しいや……」
ははは、と乾いた笑みを浮かべながら灼熱の光を地に浴びせている元凶を睨み付ける。ギラギラギラギラ何処ぞのアイドルよろしくさりげなく生きているそれは残念ながらストレスしか感じさせない。
――今度ソルロックに会ったら問答無用で叩きのめそう。
完全なる八つ当たりではあるが、とにかくそう心で決意しながら、彼女は早く夏が過ぎるように秘かに祈った。
戻る/トップページへ