ああ、気だるい。

「吐き気がするよ」

心の中で呟いたと思った言の葉は意に反し空気を震わせて貴方の耳に届いたようだ。その黒曜石にも勝るであろう闇色の瞳が不思議そうに此方を見上げるのに感づいた俺は貴方の意識を自分だけに向けることができたのだと気づいて少々歓喜を覚えてしまい自然と口元を緩める。

「何でもないよ、大丈夫」

恐らく貴方は俺の健康を憂慮していた訳ではないだろうけどそうのたまい長椅子に腰掛ける貴方の和洋折衷と主に言われた衣服が皺を刻み板張りの床にうねり落ちているその光景を視野全体に入れたらこの両腕の中にそれら全てを納めてしまって熟れきった紅花の如き体内から白玉のような肌の隅々まで内も外もどうしようもなく一括りにして愛でたくなってしまい陰気で味気ない窓辺から質素な腰掛けにゆったりと歩みを進めて欲情を誘う細い身体に指先を伸ばした。

「叔父貴」

触れると貴方の皮膚は尋常ではないほどまでにこの低体温に反応したのできっと怯えているのだろうとその異常を承知し空席となっている隣に陣取り貴方の腰を引き寄せ可能な限り優しく俺より小さな体を抱きしめるとありふれた表現ではあるけれど熟れた林檎のように胸元や頬を朱に染めて畏怖と恥じらいを堪える貴方がやけに色欲を刺激させるので鬱々しいどろどろとしたものがそれと融合してしまい自身の力で制御することが可能じゃなくなり思うまま貴方の唇へ舌を這わせ口内へと割り入り舌と舌とを絡ませ互いの粘膜を交わらせてしまったら今度は胸の奥底から何か言い知れぬ熱が這い上がってきたようで俺は素直に貴方を膝の上に抱え込み苦しそうに快楽の声を漏らす貴方の艶美極まりない二つの太ももに己の身体を挟ませ高ぶった自身を下部へ密着させる。驚き見開かれた瞳には水が張っていて貴方の欲情を此方に知らしめてくれたので口を離して呼吸を繰り返す貴方の耳元で囁いた。

「叔父貴が好き過ぎて、気持ち悪くなっちゃう」

そうなのだろうきっと俺は貴方の事が愛しすぎてこのような愚行に走ってしまうのだろうだからといってそれを止められるかといったら答えは不可能一択限りで欲望に忠実な我が儘すぎる本能に従事することが楽で気持ち良いのだと知ってしまったら後はもう堕ちるだけで貴方の身体に性欲を呼び起こさせて代えなどきかぬ快感に酔わせてしまい体だけと言わず心までも犯したいと願い実行しそうして俺は外道へと向かうわけなのだ。けれども今この一時ですらも着々と畜生に落ちぶれていく我が身は貴方を確実に欲望に従順な身体へと作り替えていてその証拠に貴方の呼吸は俺の熱に反応し一際荒くなっているのだがそれは貴方も外道へ近づいているということでありこのままいけば二人の帰着点は同等の場所となりまさしくこの狂った脳の思惑通りとなるわけで。死ぬまで一緒にいたいのではなく死んでからも一緒にいたい俺は貴方すらも汚して同じ黄泉路を無理矢理辿らせるに違いなくそれを拒む良心などというものはきっと親の死体と共に置いてきてしまって貴方が苦しもうと嫌がろうと俺は貴方とずっと一緒にいるのだろう、それが唯一俺に出来る愛情表現だから。

「ねえ、抱いて良い?」

願わくばこの行為によって更に貴方が汚れることを。想いを込めて泣きそうな貴方の頬に口付けを一つ落とした。


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