数多の戦場を駆け抜け、死んで、生き返らされて――今現在。
当時とは全く違う生活様態に戸惑いながらも、俺達はなんとか生き長らえていた。
「…あー……平和ですねぇ」
「そうだな」
何とはなしにそんな会話を繰り広げながら、目の前の童顔上司の顔を眺めてみる。
窓の外の景色を退屈そうに覗く両の目は遠い記憶のそれと全く違いない色をうつしていた。
俺達の中で今のところわかっていたのは、当時から信じられないほど膨大な時間が経っているということ。
そして、もう一つ、絶望的なこと。
「……隊長」
「なんだ、アサフス」
またおざなりな口調で会話をする。
この胸にあるのは気だるさ、なのだろうか、酷く頭を呆けさせ昔のことばかり思い出してしまう。
「皆、どうやって逝ったんでしょうかね」
ポツリと出た言葉は、やけに軽かった。
あの時、俺達の最期を見届けてくれた者、一緒に死のうと言ってくれた者、全てが全て懐かしい。
「……アサフス」
「わかってますよ、俺達がこうやって出会えていること自体が奇跡なんだってことは」
けれど、それでも頭に過るのはかつての仲間の笑みや眼で、脳裏に一人一人の容貌を思い浮かべるだけでもまた会えるような、そんな浅い期待すら感じてしまう。
馬鹿げているだろうか、もう二度と出会えないであろう友人達とまた一度見えたいと願うのは。
愚かしいだろうか、彼らが隊長のようにひょいと姿を現すんじゃないかと期待をするのは。
あの地下に眠っているかもしれないと淡い期待に胸をふるわせるのは――本当に、いけないことだろうか。
「ねえ隊長、あいつら俺達みたいに顔だしませんかね?生き返って、また一緒に一暴れできませんかね?」
「………」
「だって、まだ、こんなに俺はあいつらのことを覚えてるのに、あいつらの死に顔だって見てないのに、それなのに」
目の奥が熱くなる。
悲しい、痛い、どうしよう。
「何億年も後の世界に自分だけひょっこりと生き返って、不条理でしょうが!あいつらだって、きっと何処かで……」
「……もうよせ」
「でも!」
「そうやって口にすればするほど、辛くなるのはお前だ」
ズキリと、奥の方が痛んだ。
無色不透明な思考が瞳から熱いものをこぼさせる。
頬に伝ったものは、手の甲に落ちた。
残酷だと、思う。
それが時の流れか、はたまた己の存在かはわかりやしないけれど、酷く切なくて、苦しくて、その負の感情に堪えきれなくなり泣き続ける。
隊長も辛いのだろう、けれど俺にはそれを見せずにただ下げた頭を撫でていてくれる。
その優しさが、今の俺には唯一の救いだった。
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