持ち主は現在庭に出て植物と触れあっているらしい。
手に持ったそれは確かに鋼の重量であり中身もそのまま、人殺しが出来る状態。
全く無用心もいいところだと俺は溜め息をついた。
「おい、ツァーリ」
目の前の椅子に悠々自適といった様子で座りながら笑っている一応大将の男へ視線を向け、注意くらいしろと叱る。
俺が言ったところでこいつには全て悦びに繋がるのだろうが、それでも言うべきことは言っておかなければならない。
案の定あいつはいつも通りのはり付いた笑みを浮かべ此方の眼を見上げた。
「大丈夫だよ、何も知らない子供がいるわけじゃなし」
「こういう時に客が来たらどうするんだ」
「逃げたら殺す、なんて脅してみようか」
茶化すようにひねくれたことを言い放つその口元が歪み、自らの服の裾を僅かに踏みつける。
変わらない表情を浮かべるその目には何が映っているのかわかる術などないが、腹のたつ表面上の聖人面をどうにかしてやりたくて銃口を奴の額におしあてる。
ゴリ、と骨に当たる音が確かにした。
「……なんのつもりだい?」
「別に」
落ち着いた声音で、動じることなく俺に微笑む。
これだけしてもまだこいつはその双眸に悦びしか映さないのか。
訳も分からぬどうしようもない苛立ちが胸に巣食う。
ただ、こいつの態度が気にくわない、気にくわないのだ。
「今俺が引き金をひいたらお前は死ぬな」
「そうだね」
「ならなんで反抗しない」
「そりゃ、だって」
何とはなしに瞳を歪ませ口角をさらに上げる。
聞きたいような、聞きたくないような此方の心地も知らずに奴は咽喉を震わせた。
「君に撃たれて死ぬなら最高の最期じゃないか」
異常だと、思った。
被虐趣向者もここまでくると理解に苦しむ。
俺に殺されることが最高だと言うのならば今一緒にいるこの時間はそんなちんけな最期にも劣るのか。
止めをさす此方の精神に深い亀裂を生じさせることも、被虐者よりも加虐者に傷が残るある意味自虐的な行為だということも、知らないで。
「馬鹿だな、お前は」
「そうだね」
「ああ、本当に、大馬鹿野郎だ」
机の上に銃を投げ、椅子に座るこいつの頭を抱き締める。
想像しただけで痛んだ心臓をそっと撫でながら、この男が真の加虐者なのじゃないかと考えたけれど、珍しく甘えるように腕が背をかすめたので、今はとにかく何も考えずに水色の髪を撫でた。
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