その言葉を聞いた瞬間何も考えられなくなってしまう。
ドキドキと、胸が鳴る。
ボロボロ流れていた涙もいつの間にか止まっていた。
「よ、揺武……それ、どういう意味?」
「どういうって、そのままの意味だけど?」
口角を歪ませながらそういう彼の瞳は空のような青色で、まるで彼の口にしたことは全て実現するかのような錯覚をおぼえる。
実際俺より少し小さいのに、なんでこうも大きく見えるのだろう。
最早それは生まれ持った天性としか言い様がない。
「だってそしたら王鞍とずーっと一緒にいられるし守ってやれるし。金なら俺が稼いでやるしご飯だって作ってやるよ、お前はいるだけで生活できるんだから悪い話じゃないだろ」
「で、でも男同士は結婚できないんだよ!?」
「知らないのかよ?俺がお前の子供になれば結婚したことになるんだぜ」
胸を張って知識をひけらかす彼に何も言えず、そうなのかと納得してしまう自分に疑問を感じながらも結婚という現実的な言葉を聞いて少し考えてみる。
確か父さんが結婚なんてあきらめが肝心だって言っていたけど、これも同じことなのだろうか。
俺と揺武が両親みたいな生活をしている姿が想像出来なくて僅かに首を傾げた。
「なあ、王鞍」
気付いたら、大人びた笑みを浮かべて彼がすぐ近くまで寄ってきていた。
どうすればいいかわからずにただぼうっとしていたら、答えはと彼が訊ねてきてドキリと胸が高鳴る。
どうしよう、どっちが正しいのかわからない。
嫌なのか嫌じゃないのかすらもわからない。
何を言っていいのかわからなくて、ただ時間だけが刻々と過ぎ去っていく。
暫くしてから痺れを切らしたのか、揺武は溜め息を一つついてこう提案した。
「わかった、じゃあ俺達が進化し終わった頃にまた俺が訊くからそん時には絶対返事しろよな。いいか絶対だぞ!」
「う、うん」
真剣な瞳に怖じ気付き、思わず頷き肯定をしてしまう。
ドキドキドキドキまだ心臓は早く鳴る。
此方の身体の変化にも気付かないで彼が離れていくのを見て、俺は安心と少しの寂しさを感じた。
そんな会話をしてから何年経っただろう。
もうすでに進化も終わってしまった俺の側にはやっぱり成長しきった彼がいる。
いつの間にか俺の背を追い抜いた彼は今、大人の笑みで俺を縛り付け、邪かつ純粋な欲望に従い行動している。
未だに一緒にいると心臓は活動を活発化させるし、僅かの恐怖心だって沸き上がった。
それでも、時たま彼が心底幸せそうに笑うから俺もついついほだされて離れられない。
恋ほど理屈ではないものはこの世にないと思う、そのくらい俺は彼が好きだった。
「なあ、王鞍」
昔より低い声、落ち着いた調子。
その声で耳許に囁くのはやっぱりあの言葉なのだ。
※お題サイト「378」様より拝借したお題ですがサイト様が閉鎖なされたのでお名前のみあげさせていただきました。
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