CV井上K彦のカブさんにつられてうん年ぶりにポケマスやったら脳が焼かれました。おまけのポケマス主人公ケイ君はテンションがおかしいです。







  近頃のアオキはおかしかった。正確にはおかしいと自認していた。その原因は不明だが、さりとて検討もつかないというほどではなかった。心当りとしてアオキの頭にはここ最近ある男の姿が浮かんでいる。この人工島パシオにて親交を深めたガラル地方のジムリーダー、カブ。ふと気がつくと彼をどう食事に誘うかばかり考えていた。
 今まで歩んできた人生においてアオキは『普通』を望んできた。嵐とは程遠い凪いだ海のような安定を良しとした。カブと行動を共にするのも彼の隣が居心地良く落ち着いたからであった。
 それなのに、カブとの交流を重ねる内にアオキの心にはふとした瞬間さざ波が立つようになった。一体どういうことかと理性が疑問を呈するより早く、小さな違和感は度重なる経験により段々と肉付き始め、ある一つの確信へと変わっていく。それは未熟な若い時分にあったかもしれないが少なくとも今のアオキには馴染みない遠い感覚の色。この齢で抱くにはいささか熱すぎる焦がれ。
 狂うほど若くはない。ただ認め、アオキは自問する。
 ──欲しいものが出来た時、普通ならばどうするか?
 その問いが思い浮かんだ時点で、答えは既に決まっていた。



 ある日の夜。
 夕食を共にした二人は行きつけの店を後にした。
「今日もありがとう、アオキくん。とても楽しかったよ」
「いえ……」
「また誘ってくれると嬉しいな。それじゃあ」
 カブはアオキに軽い挨拶をして帰路につこうとする。いつもならばそのまま現地解散となるが、この日のアオキは少し違った。すかさずカブの背に声をかける。
「カブさん」
「ん、なんだい?」
 振り返るカブは今出たばかりの店内から漏れた電球色の明かりに照らされオレンジ色に染まっていた。首にかけたタオルを掴みながら穏やかな眼差しで見上げてくるその姿はアオキにとってはすっかり見慣れたいつもの光景である。
 アオキは言葉を続けた。
「自分はあなたとの時間を心地好く思っています」
「それは嬉しいね、ぼくも同じ気持ちだよ」
「ですからもうこの場で次回の約束を取り付けてしまおうかと思いまして……」
「え、良いのかい?是非お願いしよう」
 カブの反応を見たアオキは使い古されたビジネスバッグから私用のスマホロトムを取り出してスケジュール管理アプリを立ち上げた。そこには既に完了した休日の予定が登録されている。ここ最近はカブとの予定ばかりだ。
 アオキは機能の一つである月間カレンダーをカブに見せ、直近の休日を指差した。
「次はこの日などいかがでしょうか」
「いいね、ぼくもその日は空いているよ」
「承知しました、ではいつもの時間に」
 新しい予定を書き込むとスマホロトムはビジネスバッグへと戻っていった。楽しみだね、とこぼすカブの瞳をアオキは見つめる。じっと、感情の読めない黒い眼で。
 そして。
「それと」
「うん?」
 ほんの少しだけ、間を置いて。

「自分はあなたを好いています」
 アオキは何食わぬ顔で想いを打ち明けた。

「……えっ?」
「また日を改めてあなたに交際を申込むつもりなので、その時はよろしくお願いします」
 唐突な宣言と共にアオキは長年の営業で染み着いた30度の一礼をする。何てことないように告げたそれは、けれど嘘偽りない本心だった。同性からいきなり向けられるにしてはあまりに衝撃的だろうこの発言がカブを困惑させることは百も承知であった。事実、頭を上げたアオキが目にしたカブの顔には驚きが浮かんでいる。
 ただアオキにとって予想外だったのは、その表情から嫌悪や拒絶の感情が読み取れなかったこと。
 いや、むしろ。
「──アオキくん……今の言葉は、本当かな?」
 恥じらうカブの頬には明かりの色とは異なる赤みが確かにあった。
 アオキは珍しく面食らうが、動揺を顔には出さず平然とカブの問いかけに応える。
「はい。まあ……あなたが冗談として受け取りたいのなら、止めませんよ」
「いや、そういうつもりじゃないんだ。それどころか……ははっ、参ったな……こういうのは慣れてないから、照れるね」
 カブは頬をかきながらはにかんだ。その姿を見て、再びアオキの心に波が立つ。ああやはり、とアオキは心中で呟いた。
 カブの表情、声色、全てがアオキの心を波立たせる。奥底に隠れていたアオキの欲を表面化させる。例えばカブが今のように眉尻を下げて困ったように笑った時、例えばカブが先約を理由に食事の誘いを断ってきた時、例えばカブが日中ガラルのジムリーダー達と談笑する姿を見かけた時──あげつらえば、キリがない程に。
 人の動向など己には関係ないはずなのに知らず知らずアオキの胸はざわめいた。そして彼の中で最も意外だった点は、他でもないアオキ自身がそのざわめきを悪くないものとして認識していたことだった。
 アオキは思った。この人になら心乱されるのも悪くない。いや、違う。この人に心乱される日々を当たり前にしたいと。平凡な己の人生の隣にカブという男が末永く居てほしいと、願ったのだ。
「……また場を設けてくれるなら、返事はその時で良いね?」
 熱っぽく微笑んだカブが確認するように訪ねる。もうすでに回答は決まっているとでも言いたげに。
 もとより彼が首を縦に振るまであらゆる手段を用いて何度でも想いを伝え続ける心積もりだった。カブの気持ちが如何様であれ、関係なかった。けれど。
「はい、是非とも」
 そう返すアオキの口角は僅かにだが上がっていた。
 問いの答えはひどく単純で。
「それでは、またご一緒出来る日を楽しみにしています」
 ──欲しいものは欲する、そんな『普通』が結局一番強いのだ。



終わり

イベストでめちゃくちゃ仲良くなってたので血迷いました。私は悪くない、カブさんとセットでアオキさんを実装する運営が……カブさんとアオキさんに温泉行かせるポケマス運営が悪い……(悪くない)


おまけ

 おっす僕ケイ!パシオで色んな地方のバディーズ達と懇ろになってるラッキーボーイ!パシオの居心地がよすぎてWPMが終わっても地元に帰れる気がしないよ!
 そんな僕の一押しトレーナーはガラルのジムリーダーであるカブさん。パシオに来る前からカブさんのことはインターネットや雑誌で知っていて、ずっとずっと憧れのトレーナーだったんだ。カブさんがパシオに来ることになった時は大はしゃぎで貯めたダイヤを砕いちゃったし現ナマも溶かしちゃった!テヘ!
 でも……なんだか最近カブさんの様子がおかしいっぽい!?具体的にはトレーニングの休憩中にぼうっとしていたり、そわそわしながらスマホロトムを眺めていたり、かと思えばおにぎりを見て愛おしそうにはにかんだりして!あのキビキビとしたカブさんがいったいどうしちゃったの!?って心配になった僕はカブさんに訊ねてみたんだ。でも、カブさんは頬を赤らめながら「年甲斐もなくはしゃいじゃったかな?心配をかけてごめんね、ぼくは大丈夫だよ」と照れてごまかすばっかり。嘘じゃん!絶対嘘じゃん!
 カブさんはそれ以上教えてくれないから僕は方法を改めた。本人が無理なら他の人に訊けばいい。カブさんの様子が変わったのは数日前、カブさんと仲が良い人ならなにか知ってるかもしれない──そんなわけで近頃カブさんと妬ましいほど超絶仲良しだったパルデアリーグジムリーダー兼四天王兼サラリーマンとかいう前代未聞の肩書きをもったアオキさんに事情を訊ねてみたんだけど……。
「ああ……それはきっと自分のせいですね」
「ええ!?喧嘩でもしちゃったの?」
「いえ、そういうわけでは……、…………」
 そこでアオキさんは長考モードに突入しちゃった。無表情?真顔?でナウローディングされると手持ち無沙汰でこっちも困っちゃう!ただ今回はちょっと短めに五分くらいで終わったよ。ひどい時は何十分もかかるってチリさん言ってたからマジで短い方だよ。
「……すみません。カブさんの様子がどうだったのか、もう一度教えていただけますか?」
「へ?良いですけど……」 
 アオキさんの要求通りに僕はもう一度カブさんの状態を伝えた。アオキさんはなに考えてるんだかわからない真っ黒な瞳を僕にじっと向けて相づちをうつ。そして僕が全部話し終わると、ほんの少しだけ目を細めて。
「……そうですか」
 とだけ言った。
 え……今笑った?あのアオキさんが?表情筋をうご……いやうごいた?あれわかんねえ目の錯覚かな?
 そうこうしている内にアオキさんはいつもの様子で「では、本日も絶対に残業出来ないのでこれにて失礼します」と言い残してお仕事に戻っていっちゃった。ちょっと待ってよアオキさん、あんな反応しておいてそりゃないよ!いったいカブさんと何があったの!?結局何も分からずじまいで僕はまたやきもきすることになってしまった。その日はカブさんが心配で眠れなかったから、とりあえず明日もう一度カブさんと話してみようと決心したんだ。

 で、その翌日。
「な……何があったのぉ!!!?」
 ポケモンセンターにはカウンター席で打っ伏して重苦しい空気を作り出すガラルのジムリーダーさん達(一部)の姿があったよ。びっくりした僕だったけど、中でもピンピンしているメロンさんが「カブに恋人が出来たんだってさ!目出度いねぇ」と衝撃の事情を教えてくれたお陰で無事打っ伏し仲間に加わりました。御仕舞い!




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