FGOのベリーショート短文を3本。いつもの短文より短い。
CP要素無し。全部女主人公の一人称かつ独白のようなもの。
マシュやサーヴァントなど主人公以外も出ていますが出番はちょろっとです。1本目以外は暗め。2部6章までのネタバレ有り。







@よろしくね、お星様

幼い頃、よく私はプラネタリウムへ連れていってもらっていた。造られた闇の中、頭上360度に拡がる人工的な星々は満天。星と星を繋げてぼんやりと、星座が浮き出したかと思えば解説のお姉さんが彼らのお話を物語りだす。オリオン座、蛇使い座、射手座、双子座、天秤座、牡牛座──遥か彼方の過去から語り継がれてきた神話の物語を次々と、淀みなく。
悠久の時を超えて現代に届く彼らの生き様は子供心にだが私に久遠を感じさせたものだ。その幸福たるや、この時この私だけが美しい夢の世界に招かれたのかと錯覚するほどだった。
日常とは切り離された異空間へと遊びに行ける場所、それがプラネタリウムだった。私はプラネタリウムが大好きだった。そして、そこで聞き入る神様や英雄達の物語も大好きだった。

──そんな彼らに、まさかこんな形で出会うとは。

「お、マスター!おはようさん。今日は遅かったなぁ〜、いつもは飯時になったらすっ飛んで来るってのに」
「確かに平均よりやや遅れているな。寝付きが悪いのかはたまた睡眠過多か……面白味のない症状だが何らかの病の予兆である可能性は否定出来ない。朝食が終わったらまずは健診だ、マスター」
「貴方は相変わらずですね、アスクレピオス。しかし彼の言い分も尤もです。身体は資本、大切にしませんと」
「ふん、先生も甘いですね。人間相手に気遣いなど。……おい貴様!今どさくさに紛れてポルクスに見惚れていただろう!人間風情が許さんぞ!」
「ちょっ、兄様!落ち着いて下さい!ここは食堂ですよ!」
「その通りですわ。ここはサーヴァントはおろか人間の職員も集まる公共の場……ここで問題を引き起こそうというのなら、この私の裁定を受けていただくこととなりましょうが、よろしくて?」
「まあまあ、皆集まって賑やかねぇ。おばあちゃまも混ぜてくれるかしら?」

わいわいと食堂の一角で机を囲み食事を取る一堂(と何処からともなくやってきたエウロペさん)に私は薄く苦笑いを浮かべた。
このカルデアという組織に来た時私はただの一般枠マスター候補の一人だったのだが、偶然か必然か、度重なるアクシデントの結果私が数多の英霊と共に人理を守る戦いに挑む事となった。通常の聖杯戦争では英霊の召喚はマスター一人につき一騎のみのようだがこの戦いにそんなルールはない。目的は人理修復、人類史を守る事。魔力供給の問題が解決しているカルデアでは協力してくれるサーヴァントは多ければ多いほど良い。
故に、リソースの余裕と暇さえあればカルデア式召喚を行ってきたのだが──よもや出会う英霊が悉く星座に関係するサーヴァントだとは、何とも数奇な縁を感じざるを得ない。

しかし、この人理修復の旅において私は不謹慎ながらも心踊っていた。今私の目の前には解説のお姉さんが語る物語では知り得なかった等身大の彼らがいる。親しんだお話の登場人物達が極限の解像度で私の前に存在している。なんという奇跡、僥倖だろうか。思わず口元が弛む。
人理修復の旅は生半可な覚悟では到底無し得ない苦難という。その行程は辛く困難な道のりとなるのだろう。だというのに不安はあまり無く、自然と勇気が湧いてくる。おそらくそれは、憧憬の対象であった彼らが見上げずとも側にいて、見守っていてくれるからなのだろう。私にとってはとても心強い事だった。

「おはよう、皆!」

いつもよりちょっと深く息を吸い、ニカッと微笑みながら彼らに手を振った。そして輪の中に入る為軽い足取りで彼らの席へと歩みよる。

私の幼少時代を鮮やかに彩ってくれた貴方達よ。どうか今の私を見守っていて下さい。
貴方達がいるならば、きっと私は新月のようにお先真っ暗な状況であろうとキラキラとした星の輝きを見つけられる。絶望の中に希望を見出だせる。貴方達との冒険が、私の心には掛け替えのない支えとなる。
大袈裟かもしれないが──貴方達に巡り逢えたのなら、世界を救う重圧も悪くないとすら思えるのだ。





A森君の茶会

チョコのお返しにと設けられた茶の席で彼はこんな事を言った。

「マスターが一緒になるならよ、そうだな……薬師とか町人とかよ、普通の奴にしときな」

それは私の身を想っての言葉だったのだろう。けれどもその言葉を聞いた時、自分でもわからないのだが私は嬉しさよりもまず安堵を覚えた。安堵を自覚した時は何故そう感じたのかを疑問に思った。何てことはないささやかな引っかかりではあったが彼の言葉は不思議とずっと私の心に残った。

そしてふと、何でもない時に得心がいった。

青空に焦がれた獣の若者。
大人になれなかったブロンドの少女。
歌を知らなかった純粋な少年。
家族すらも忘却した幼子。
そして己が運命を良しとせず、結末を知りながらも神に抗う事を決意した双子。

私が生きる為に切り落とし、踏み台とした異聞帯の彼ら。私は私の世界を取り戻す為に彼らの世界を奪った。無かったことにした。今彼らの生を記憶しているのは白紙化された地上において私達のみである。
事実だ。例え誰が弁明しようが詭弁を語ろうが擁護しようが、私がした事は事実である。お前は正しい、間違っていない。そんな慰めをしてくれる英霊もいたが、結局慰めは慰め以上にはならない。ただ直接手を下していないだけで、最終的に私が彼らにした事はたった一つだった。

──私は、彼らを、幾億幾万もの人を己が意志で殺したのだ。

それはある意味では反英雄と呼ばれる者達に並ぶ悪行なのかもしれなかった。しかし後悔はしていない。してはいけない。第一に私は生きたかった。そして汎人類史を、私の世界を取り戻さなくてはと、ただがむしゃらに駆け抜けてきた。
だが事実は私の精神にずっと記憶として残り続ける。この事実を忘れる事など出来はしないし、出来てはいけないのだとも思う。彼らの未来を奪った私は、彼らを忘れてはならないのだから。

でも、それでも。
こんな私でも。
普通の人と一緒になって幸せになれると思ってくれる人が、まだいるのだと。

その事に、きっと私は酷く安堵したのだ。





B愛せた君よ、私は

終末が近づく瓦礫の中、ぼろぼろになった青年が地に崩れ落ちた。マシュは酷く悲しげに、憐れみすらも含めた眼差しを向けた。
6人目のクリプター、ベリル・ガット。
マシュへ歪んだ愛を向けた男。
言葉を交わした数こそ少ないが彼の異常性はこの戦いを通して多少なりとも伝わった。愛していると言いながら彼女を傷付けようとする姿はおおよそ常人の理解の範疇を超えている。
マシュが言ったように彼の愛は誰にもわからないのだろう。もしかしたらそれは彼が別の誰かだったとしても、あるいは誰が誰に対して抱いた愛であろうとそうなのかもしれない。人は他者の心の奥底まで読み取る事など出来ないのだから相手の愛の全てをわかる者など存在し得ないのだ。
それでも人間はより知ろうと足掻いたり、知った部分を基に愛する事が出来る生き物だ。それもあって人間は誰かを愛する。多くの人が誰かを愛せるのだろう。その部分はどうやら彼も変わらないらしい。
踵を返してシャドウボーダーへと急ぐ途中、肩越しに後方を見た。うつ伏せで倒れ伏すその様は私の心に強く残った。

ベリル・ガットよ。
狼の令呪を右手に宿した男よ。
私は貴方が羨ましい。例え理解がされずとも、その愛を否定されども、愛せた貴方が羨ましい。

死にたくないが為に世界を殺して生き永らえてきた今の私には自己愛すらもわからなくて、最早誰をも愛せる気がしないのだ。





終わり

@の感想
→お星様の話。久々にプラネタリウム行きてえなぁ〜と思いながら書いてた。子供の頃憧れた英雄や神様達と戦うってとてもロマンあると思う。因みに弊カルデアには星座系鯖はピオス先生とケイローン先生しかいらっしゃいません(ぬいぐるみのオリオンもカウントしていいなら彼もいる)。

Aの感想
→森君のバレンタインイベントが最高だった。英霊達は結構主人公の事を労ってくれたり幸せたれと願ってくれたりする人多いけど、肝心の主人公(特に2部以降)は自分自身を『平凡な幸せを得ることが出来る人間』として認識出来ているのかな。逆に異聞帯側の命をなかったことにしたからこそ彼(彼女)はその記憶を抱えながら普通の人間としてはつらつと生きようとするのかもしれない。いずれにしても若者の未来は幸福である事を願いたい所。

Bの感想
→ベリルの最後はあのタイミングで!?って時に来たからちょっと複雑な気持ちはある。けれど彼のマシュへの感情は確かに愛だったんだろうな、と私もマシュのように思いたい。
ちょっとAと被る所あるけど、2部以降の主人公は誰かを恋愛対象として対等の関係で愛せるのかな、そもそも己を恋愛と最も遠い場所に位置付けてはいないかなと思って書いてみた。憧れや親しみは対英霊にも抱いている感情だけど恋愛感情となると難しいかもしれない(英霊は皆死人だし)。可能性があるとしたらマシュかなぁ。でも個人的にマシュは主人公の相棒でいてほしい気持ちもある。



凄く勢いだけで書いたんで@の鯖の口調あってるか不安です。後半はちょっとシリアスめに主人公の恋愛観について触れてみたけど、凄い勝手な妄想なんで本当の主人公像とはかけはなれていると思います。でもツングースカ辺りまできた主人公達は実際どういう心境で戦ってるんですかね、考える暇もないくらい必死で現実に食らいついているだけなのかもしれない。
こんなん書いたけど二次創作でのCPは別腹なんでそれはそれこれ、もっといちゃついてくれという気持ち。ギャグも大好きなんでイベントのギャグパートはとても心が癒される(尚ハロウィン)。



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