「警察官襲撃事件?」
「そうだ。いずれも交番に詰めている警察官が無差別に襲撃されている。」
「犯人の目処は?」
「2年前に自衛隊を離れた元3等陸佐小田敦だ。自衛隊在籍時から靖国神社への頻繁な出入りが認められ、その頃から公安がマークしていた。」
「それで?マークしていた小田元3等陸佐が警察官襲撃を繰り返せている理由は?」
「単純だ。警視庁の公安が張っているだろうという予測は出来てたんだろう。予め用意してあったセーフハウスやらを行き来して上手く雲隠れしやがった。そろそろ尻尾を掴めるかと思ったらこれだ。最初から警察官襲撃が目的だったんだろ。」
「理由は?」
「さぁな。だが靖国に参拝する自衛官に公安が目をつけるのは周知の事実だ。その事を嫌悪している様子は見受けられた。その事に対する不満かもしれない。」
「なるほど。全く納得出来ないね。」
「それから小田の目的が警察官なのか、それとも公安なのかは不明だ。もしかしたら公安を誘き出したいのかもしれない。」
「……公安を、」
「ねぇ、政府に対しての小田の意識は?」
「詳しくは情報が回ってきていないが……不満はあったようだな。世界的情勢を見ても後手後手な政府のやり方には文句を付けていたという話もある。もしかしたら、警察官襲撃の先にはクーデターを目論んでいるのかもわからない。」
「……おいおい。冗談だろ?1人で?クーデター?」
「1人じゃねぇ。小田と一緒に自衛隊を離れた森元准陸尉、佐倉元陸曹長を始め数人の協力者がいる。」
「それこそ冗談だろ?」
「更には現役の自衛官にも協力者がいた事が判明し、共謀罪の容疑で今朝逮捕状が出た。」
「嘘だろ……マジかよ……」
「何が狙われてんだよ……政府なのか、警察なのか、公安なのか。それさえも解らないとか……」
「兎に角、原、識。お前らは各自交番及び派出所の見回りを頼む。それとなくでいい。不審人物及び、不審物があった場合は速やかに連絡を取れ。」
「「了解した」」
「福山警視長、僕は、」
「降谷。お前はすぐに動ける様にだけしておけ。警察庁待機だ。」
「しかし、お二人だけでは23区内にある交番や派出所の見回りは困難です。ここは僕も参加すべきかと、」
「降谷君。」
「……穂積さん」
「降谷君は死ねるでしょ?」
「……。」
「そんな顔しないでさ。いざとなったら呼ぶからよろしくね。」
「しかし、」
「ちょっと。識の心配はして、俺の心配はしてくんないの?」
「原は心配しなくていいだろ。」
「薫ちゃん黙って??」
「ま、大丈夫よ。確実に犯人とぶち当たるって訳でも無いしね。」

「って、言ってるとこれなんだよなぁ……」
ピアスをカチリと押し込む。指を口元に近付けた。
「薫。」
「どうした。」
「現在地確認よろしく。」
「……南杯戸駅前交番だな。いたのか?」
「SITみたいな格好したヤツらが5人、スモークの貼られた黒のワゴンから降りてきた。ナンバー言うから照会よろしく。」

「降谷!林!滝川!黒瀬!」

「識が小田らしき人物を見つけた。乗っているワゴン車は2週間前から盗難届が出ているからほぼ間違いないだろう。場所は南杯戸駅前交番、SITのような格好をしている事、今までの襲撃の様子から見て複数の武器を所持している事は間違いない。発砲許可は出てる。識の指示を仰ぎつつ現場に急行しろ。相手は元自衛官達だ。武器の扱いを心得ている犯人相手に油断も躊躇も必要ない。被害を拡大させるようなら射殺も厭うな。うちが動いている時点で国家を脅かす脅威として対処する。いいな。」

「識、今から4人そちらに向かわせるが、状況はどうなってる?」
「やばい。」
「……おい。まさか襲撃されてるのか?」

穂積さんの報告をスピーカーで受けながら、福山さんがこちらに早く行けと手を払う。黒瀬さんが車の鍵を持ち、滝川さんが後に続く。僕も林さんと室内を出ようとした時だった。

パンッと一発乾いた音が響いた。

室内に緊張が走る。スピーカーを通じて聞こえた銃声に誰もが息を呑む。

 


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