春と夏の間くらい。
開けた窓から漂う風が、午後の雰囲気にどことなく合い、たまらなく心地よく感じる今日この頃。教室の一面を圧迫するかのように存在する黒板に、白のチョークで忙しなく文字の羅列を記入していく担任の手元をボーッと眺める。
後ろから二列目の一番端の窓側の席。割りと待遇高めのポジションで少し気の抜けた私は、英語の教科書を開き頬杖をつく。少し斜め前で揺れるカーテン越しに、離れた大きなグランドを見つめていた。
担任の声を、心地の良いBGM音に変換しながら見つめていると、その視線の先のグランドで他クラスが授業する様子が見えた。なんの授業だろう·····2人1組でなにかやり合ってるようなので隣のヒーロー科がやってる組手の授業とか近接型の体術とかかな·····
「あ〜。あとここ、テストに出すから。要チェケ!!」プレゼント・マイク先生のそのセリフを聞いた私はハッと意識を教室にもどす。黒板を見て急いでルーズリーフを1枚ペロリと出すと、教科書と黒板を睨めっこしながら書き写す。この先生の筆記テストややこしいんだよね·····ちゃんと書いとかなくちゃ!
カリカリカリ。あらかたルーズリーフの紙面の線に沿って文字の羅列を記入したのち、ふと目線を先程のグランドに戻した。すると、なんだかつい最近、恐らく見た事のあるのだろうその後ろ姿を見つけてしまった。あれは·····あの人は確か·····
名前を思い出すよりも先に時間が来たのか、授業の終わりを告げる担任の声が聞こえた。と、同時に突然窓からブワッと大きな風が入ってきたかと思うと、私が急いで書いたルーズリーフ1枚がフワンと窓から飛び出てしまったのだ。
「うわっ、ちょ!!」
急いで手を伸ばしたのだが時すでに遅し。ヒラヒラヒラと教室から離れ、数階下の地面の上に落ちるルーズリーフを窓から眺めることとなった。
「あっちゃー·····名前、ノート飛んでっちゃったのー?」
「·····なんか急に風が吹いてさ〜。ちょっと取ってくる!」
落ちた先を確認して小走りで教室を飛び出した。下に降りるまでは多分3分とかからないと思うけど、また風が吹いてあのノートが飛んでいくとなると、今度の私のテストが赤点確定となってしまう。テストに出るって言ってたもんね。早く取りに行かなきゃ。
名前が飛び出した数秒後に、ふと誰かが飛んでいったそのルーズリーフに気付き、無造作に拾ったことを私は知らない。