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かの有名なエウリュディゲ荘園に来たのは、数年前だ。逃げ延びて職探しをしていた時、たまたま拾った新聞の求人情報欄で見つけた。その記事を握りしめ、着の身着のまま現れた私を一瞥したナイチンゲールさんは、ただ一言、採用します、と告げた。
ここには奇妙な人達が多い。姿形もそうだが、個性的な人たちが集まっている。彼らが何をしているのか、詳しくは知らない。ハンターと呼ばれるもの達と、サバイバーと呼ばれるもの達が、夜な夜な不思議な鬼ごっこをしているらしいことは聞いた。それにどんな意味があるかは、知らない。
そんな彼らの身の回りの世話、屋敷の景観を保つことが主な仕事であった。ベッドメイキングや各部屋の掃除、必需品の調達と配布。それらを日々こなしている。
積極的に料理などを作る必要はないが、材料や調理器具は必ず揃えておくこと、訪れる人は皆、招待客であるため丁重にもてなすこと。ただ、彼らと直接言葉を交わさないこと。それから、荘園の主の意にそぐわないことはしないこと。これらを必ず守るよう、誓約書を交わした。
私は雇われる側の人間だ。だから、雇い主の言葉に従う。それが正解か否かなどは考えなくてもいいことだ。
だから、荘園の主から送られてきた手紙にも了承の旨を返した。彼の方の意にそぐわない事はしない。
例えそれが、写真家の専属になる辞令だったとしても。
「あぁ、きみが」
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