傘を差すと、いつも隣に立つ影があった。
それは私を挟むようにして、右と左にそれぞれ一人ずついた。片方は白く、もう片方は黒い。対のようなそれらはぼんやりと見える時もあれば、すれ違う人と同じくらいはっきり見える時もある。
裾が広がった異国の服を着た二人。彼らはきっと、妖と呼ばれる類のものだということはなんとなく分かった。

ざあざあと雨が降っている。
それを軒先から見て、いつもの通り傘を手に取った。お札が貼ってある、曰く付きの傘。古い骨董屋に置き去りにされていたそれを、貧乏性だった父がタダ同然で貰って帰ってきたらしい。今となっては父の形見だ。
ぱん、と音を立てて傘が開く。途端に、待っていたかのように、ずるずると地面から影が這い出た。少し強まった雨脚を、白い人が睨みつける。