間違ってないことはある


目を覚ますとそこは私の部屋ではありませんでした。
冷たい鉄の格子に奥に見えるキョンシー。

「きょんしー?」

思わず変な声が出たが私は悪くないと思う。刑務所なんだから牢屋があるのは当たり前だが、自分が入れられる覚えはない。
しっかりふわふわの布団に寝ていたようだし、何かしたということでは無いだろう。牢獄の中にあるにしては良い布団に少し疑問を覚えたが、そんなことよりここはどこだか考えるのが先だ。

いつもより暗くてじめじめしてて、ここに居るだけでどうかしそう。もちろん体調はすこぶる悪い。というか空気が悪くて吐きそう。
また眠気が襲ってきて、瞼が落ちてきた。

あ、無理そう。




▽ △ ▽ △




また牢の中で目を覚ました。体調はまだ悪い。でも私は彼の元へ行かないと。
重い身体を無理やり動かして歩いた。鉄格子の扉は簡単に開いて、なんだこれ。閉じ込めとく気ないじゃないか。

「きっと猪里さんだな、バカヤロー」

出口は目の前にある。この先に待ってる景色がなんだか分からないけど、私なら助けられるはずだ。

「法子姐さん、猿鬼さん...。猿門くんもハジメさんもいる」

全ては終わった後のようで、全てがふっ切れた彼の顔を見て涙が出そうになる。大切な人が辛かった時に私は一体何をやってたのか、後悔ばかりがついてまわった。

「名前!!」

私を見つけた猿門くんが掛けてくる。怪我はないかってそっちの方がしてるのに。

「大丈夫です」
「本当か?名前はすぐ、」
「無茶したのは貴方でしょ」

続くであろう言葉を奪ってはっきりと返すと、彼は心底驚いたようで目をまん丸にしていた。きっと、少し生意気な物言いだったからだろう。

「お前、記憶が戻ったのか?」
「戻りました」

恐る恐る聞いてきた猿門くんに笑って返すと、ほっぺをつねられた。痛い痛いと騒いでる私を見て彼は楽しそうに笑う。私が一番好きな笑顔だった。

猿門くんを救い出せたのが私じゃないのが悔しいけれど、やっぱり嬉しいものは嬉しい。猿鬼さんの事情を知っていても私は何も出来なかったし、法子姉さんが悩んでることがわかってても何もしなかった。

自分では役不足だと決めつけて。いつかきっと他の誰かが助けてくれると勝手に思い込んで他人任せにした。そのツケがこれだと思えば安いものだろうと思う。

ほっぺから手を話してくれた彼に笑いかけた。

「猿門くん、ありがとう」
「なにがだよ」
「んーん、なんでもない」

なんだよって聞いてくる彼が愛おしくってたまらなかった。
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