特命調査自体は三度目だが各地で勝手が違うから初心者に優しくないと、二年目を間近に控えながら雛鳥気取りで零しながら進めていく。
「小鳥よ、励むのは良い事だがそろそろ休憩にしてはどうだろうか」
「うん、でもこの炮烙箱だけ見つけたいの」
そう言って透ける画面越しに向かいに座る相手と会話しながら出陣部隊へ指示を出す。鑑札は一。それを確認して山鳥毛は茶の用意を始めた。私は危なげない部隊の進行を確認しながら彼の所作を観察する。
この時間が好きだ。
私の為にお茶を淹れてくれる事も嬉しいが、普段じっと見る機会はあまり無い彼をゆっくりと見られる少ない機会。直接だと恥ずかしがるし、もちろん私もそんな勇気は無い。茶碗を温め、茶葉を入れた急須に戻し、雑味の出ない絶妙な加減で揺らし、注ぎ廻す。最後の一滴は決まって私の腕に落とす。刀を握る厚みのある無骨な手が繊細で丁寧な仕事をする。
炮烙箱の発見を確認して部隊へ一時帰城の指示を出し画面を閉じると、そのタイミングで労いと茶碗が差し出された。礼を言ってうけた茶碗は常と変わらず良い香りだが、いつもより温度が低い。ふーっと息をかけて一口含むと、やはり飲みやすい温度だった。視線を山鳥毛に向けるとどこか得意げに微笑んでいる。
「どうだろう、熱いものが苦手なようだったから低い温度が合う茶に変えてみたのだが」
渋味は無いのにどこか甘さのある深い苦味。これまでの茶葉も美味しかったが、適温で飲むお茶は格別に美味しい。好きなひとが私のことを考えて入れてくれたお茶なら一入だ。山鳥毛自身は熱いお茶の方が好きなくせに。細やかな気遣いに胸がきゅんと甘 く締め付けられた。
ああ、悔しい。いつか私も彼を恋煩わせてやりたいものだ。
「すごく好き」
彼はただ嬉しそうに微笑んだ。