濡れた髪をタオルで包んだまま布団に転がる私を見て山鳥毛は顔を顰めた。別に濡れたまま寝るつもりな訳じゃないが、そう言ってそのまま寝落ちてしまうのがデフォルトとなっている私はぐうの音も出ない。
「先日それで風邪をひいただろう。まだその熱も下がっていないのに…感心しないな。」
むぅと唇を尖らせて不満だと言外に抗議するが、今日の彼には効果がなかった。
「健康体ならいざ知れず、今は特に身体を労りなさい」
寝っ転がったままの私を軽々抱き起こすと、タオルを解かれそのまま水気を拭われる。しばらくわしゃわしゃとされるがままになれば、続いてカチッという音を皮切りに温風が当てられた。なんて用意がいいのか。
山鳥毛が言ったように病み上がりどころか絶賛病人の私は起き上がっているのがだるくなって、そのまま背後の山鳥毛に寄りかかってしまう。
「…小鳥、それでは乾かせないぞ」
シャツが濡れることより髪なのかと笑みがこぼれる。大切にされているんだなぁ…なんて、心配かけている私が言うのもなんだけど。
「でも座ってらんない…」
「…参ったな」
見上げれば困り顔と目が合う。私だけが映っている愛しい瞳だ。とても雄弁な瞳は無理はさせたくないが、放置もできないと言う。
「あ。」
いい事を思いついたとばかりに身を起こし、ベッドに腰かけたまま不思議そうにする山鳥毛に向き直る。そのまま動かないよういって、彼の膝に跨って抱きつく。
「こ、小鳥?」
「これなら乾かせるでしょ?」
向き合うだけの時より私の視界は高く、山鳥毛の肩におでこを乗せるのも丁度いい。
「ちょも?髪乾かしてくれるんでしょ?」
まだ湿ったままの髪など気にせず首筋に擦り寄れば、冷たかったのか山鳥毛の肩がビクリと跳ねた。ああ、なんてかわいい。
「……」
そして私は髪を梳く指先の心地良さと抱き締められる様な感覚と体温に微睡んで眠りに落ちたのだった。
「勘弁してくれ…」
そう虚空に消えた呟きや、じわりと染まる刻印など私は知る由もない。