火傷

「ッ、」
「小鳥…!」
180℃を越える金属に指が触れた。髪をセットする私の傍らで文庫本を読んでいた山鳥毛はそれを放り出して私の腕を掴んだ。
半ば抱えられるように水道へ駆け込み痛い冷水を浴びる指先。当事者である自身より山鳥毛の方が痛そうな顔をしている。
指の感覚が無くなるのではと思う頃やっと水責めから開放され、掴まれた腕はそのままに部屋に戻されると火傷用の軟膏を塗りたくられた。
「跡に残らないといいのだが…」
まだ水膨れさえ出来ていない患部を保護しながら眉尻を下げる山鳥毛。冷やされて鈍っていた感覚が今更戻ってきてジリジリと火傷した箇所が痛む。
「一瞬だしすぐ治るよ」
以前に同じ事をしたとは言わないでおいた。多分酷く心配させるから。
「…小鳥よ、髪結は乱藤四郎達に今後任せなさい」
「どうして?前に自分以外に触らせたくないって言ってたじゃない」
その言葉が理由でヘアセットを頼んでいない訳では無いが、急な心変わりに首を傾げる。
続く言葉を待っていると酷く言い難そうにしながらやっと口を開く。
「……君が痛い思いをするくらいなら、嫉妬心なんてクソ喰らえだ」
らしくない口汚さに驚いて言葉の意味を理解するのに時間がかかった。クソ喰らえ。確かにそう聞こえた。じゃなくてその前だ、嫉妬心と言わなかっただろうか。
「愛されてるなぁ、私」
自分が嫌な事よりも、私の身を案じてくれる恋人に愛しさが溢れ出す。髪のことはまて話し合うとして、今は愛しくてたまらない目の前の彼にめいっぱい甘えてそして甘やかしたいと思った。




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