山鳥毛が出立して丸一日経った頃、こんのすけが彼からの手紙を持ってきた。内容は何処を修行先に決めたかと言うもの。
彼らしい行先。
そこは過去に二人で訪れたこともある彼に縁ある場所で、違う時代で同じ場所からあの景色を見ているのだろうかと私は思いを馳せた。
そして翌日静まり返った執務室に、紙が微かに擦れる音だけが響く。
こんのすけが運んできた二通目の手紙を、私は机の上にそっと置いた。そこには、刀剣男士としての己の在り方、自身の逸話、そしてこれから進むべき未来とどう向き合うべきか、彼の揺るぎない決意が整った文字で綴られていた。
けれど――。
「……山鳥毛……」
何度読み返しても、行間に私の影はない。主へ宛てた、非の打ち所がない、一振りの刀としての報告書。
ただそれだけだった。
胸の奥が、ちりりと焼けるように痛む。
恋人としての言葉を一つでも期待してしまった自分が惨めで、同時に、彼にとって私はその程度の存在なのだろうかという不安が、黒い澱のように心の底へ溜まっていく。
長い髪を指先で弄りながら、私はぽつりと呟いた。
「会いたくて堪らないのは、私だけなの……? ちょも……」
口にすれば、寂しさは一気に加速する。机に突っ伏して顔を埋め、私は小さく息を吐いた。
待ち遠しかったはずの手紙なのに、明日の三通目を受け取るのが怖いとさえ思ってしまう。
そんな私の心を余所に時は無情に、けれど確実に流れていく。