絡めた脚も、肌に残る熱も、まだ互いを離す気などなくて。私は君を胸に抱え込んだまま、枕に半ば頬を埋めるようにして視線を落とす。
その時だ。
君の指先が、そっと私の頬へ触れた。
「あぁ……やっぱり」
掠れる声。眠気と余韻に蕩けながら、それでも何かを確信したような響き。
「見間違いじゃなかった」
私はゆるく目を細める。
「……何を見つけた、小鳥」
問えば、君は至近距離から私の瞳を覗き込んだ。近すぎるほど近い距離。互いの睫毛が触れそうなほど。
その眼差しは、まるで秘密を暴く子どものように真っ直ぐで。けれど同時に、恋人だけが許される甘い侵入でもあった。
「山鳥毛の瞳……修行から戻ってから、変わってる」
君の指が、私の目元をなぞる。火傷でも確かめるように慎重に。
「赤だけじゃないの。青が混ざってる……蝋燭みたい」
その言葉に、私は静かに息を漏らした。
「……気付いたか」
否定はしなかった。
薄く笑うと、君の腰を抱く腕に少しだけ力を込める。汗の残る肌同士が擦れ、君の身体がぴくりと震えた。
「修行先でな。随分と見識が広がって物の見方が変わった」
低い声が、夜気に溶ける。
私は君の唇を親指で撫でた。
「そのせいだろう」
言いながら、私はわざと君を見つめ返す。
赤の中に、深い蒼が滲む。
君の喉が小さく鳴る。
「……綺麗」
その呟きは、あまりにも無防備だった。
私は堪えるように目を伏せる。だが次の瞬間には耐えきれず、君を引き寄せて額を合わせていた。
「そんな顔で見つめるな、小鳥」
熱を孕んだ囁きが耳朶を撫でる。
「君に綺麗≠ネどと言われたら……また欲しくなる」
唇が触れる寸前で止まる。焦らすように、呼吸だけを奪う距離。
「ただでさえ今の私は、修行前より随分と燃えやすいらしい」
く、と喉奥で笑えば、瞳の青がまた揺れた。蝋燭ではない。もっと獰猛で、もっと深い。
君だけを照らしながら、同時に呑み込もうとする炎だった。