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「ウルトラマグナス」
「ロディマス、あれを見てくれ」
「あー…、あれは、… 」
「ドリフトか?」
「でもなんかつれてね?」
ウルトラマグナスは強いめまいに襲われて卒倒しそうになる。
だからドリフトなどと一緒に旅はしたくないのだ…と, だが、そうもいっていられない。
現にドリフトは何かをつれて此方に向かってきているのだ。
「… ロディマス」
「なんだよマグナス」
「私の見立てが正しければ奴の後続に続く機の掲げているものは停戦旗だ」
「テイセンキ?」
「相当古い手法だな」
「ラチェット」
踵を返したラチェットは、排気を吐きながらいう。
「なにがどうあったか知らんが、話はドリフトがつけたみたいだな」
ドリフトともう一機はロストライト号へすべるように近づきオルトモードからトランスフォームした。 それを見ていたロディマスが、ウルトラマグナスにいう。
「こういうときって俺がでてっても良いのか?」
「かまわんが、私も同行する」
がこんと大きな音がして、ロストライト号の後部扉が開く。気を引き締めたロディマスがまず目に付いたのは、至極困り顔のドリフトと、その傍らで膝をつき、停戦旗を地においた一機の姿だった。
「えーと、ただいま。 ここに居たのが誰かわかったんだけど、それが、あの〜、前話したと思うんだけど、サークルオブライトの機達、で、ここに今すんでるみたいで、とりあえず敵意がないことは伝えた」
「サークルオブライト?」
「そう、ダイアトラス様の率いる」
ドリフトが背後のウルトラマグナスの気に触らないように言葉を選びながら言う。
ロディマスはといえば、背後の者が気になるのかちらりちらりと先程から視線が動いている。
それを知ってか知らずか, ドリフトが連れ立ってきた戦闘機は静かに口を開いた。
「主、ダイアトラスより使わされる者。同郷の者のさきがけがあったとは知らずご無礼を。これにて、停戦を申し入れまする」
深々と頭を下げたその姿にロディマスが一瞬ぽかんと見つめる。だが、すぐに気を取り直した。
「ロストライト号船長ロディマスだ。磁気嵐に巻き込まれてこの星への不時着を余儀なくされた。この星に長居はしないから、安心してくれ」
「それは、真によき返事わが主君も実にお喜びになるでしょう」
「だが、それとこれとは話が別だ」
ロディマスが、言葉を続けた。
「先立ってのあんたたちの攻撃のせいで怪我した船員も大勢でてる。この責任の所存はどこにある?俺らか、それともあんたらか」
「ふふ、まだお若いのにしっかりしてらっしゃる。いかにも、あなた方の巻き込まれた磁気嵐、あれを発生させているのは僕ら。故に、あなた方の宇宙船の損害、また、先立っての攻撃の損害はすべて此方にありましょう。しかし、僕らの事情もわかっていただきたい。母なる星で故郷を追われた我らは、ただ戦火から逃れて暮らしたいだけなのです」
「戦火から逃れる?磁気嵐を意図的に発生させることのどこがだ」
「磁気嵐の吹きすさぶ空間を飛ぶ宇宙船などありませぬ。戦火とは、外部からやってくるもの。僕らなりに最も安全な方法で星を守っただけなのです。とはいえ…、あなた方に突破されてしまいましては最早意味などありはしませんが。さて、このように互いを責め立てあっていたとてなんら解決にはなりませぬ。僕らが主君はあなた方が争いごとさえ起こさなければ、傷が癒えるまでの滞在、また, 船への補給をお認めになりました。 ときにロディマス船長。主君ダイアトラスが謁見を申し入れてございますが、いかがでしょうか?旅の目的を詳しく聞きたいとのことですが。」
その言葉に、意を唱えたのはウルトラマグナスだった。
「いくら停戦旗を掲げられたとはいえ, 船首を敵陣にいれることは出来んぞ」
「護衛をつけてもかまいませんよ」
「武器は」
「かまいませんよ」
剣呑とした言い方に, ロディマスが苦笑しながら言う。
「話し合いの席に着こうってのに、武器とか護衛とかはいいんじゃねえかなマグナス?」
「殺されたりしないから大丈夫だとおもうけど」
頃合を見計らったかのように、ドリフトが言えばウルトラマグナスがぎろりと睨む。
「僕らが城に客人がくるのは久しいことでしてね、みな楽しみに待っていることでしょう。」
その時はじめて顔を上げて微笑んだ姿に、ロディマスが言う。
「いつまでも膝なんか突いてないでたってくれ。あんたの名前は?」
「ああ、申し遅れました。 僕の名はシュヴァリエディアス。ナイトと呼んでくださってもかまいません」
「わかった。俺はロディマスでいい。なにかあったら遠慮なくいってくれ」
「では、早速僕から頼みたいことがありまして」
そういったシュヴァリエディアスがくすくす笑いながら, 言う。
「先日、僕と剣を交えたお二人の怪我の具合はいかがしょう?」
「ホワールとサイクロナスだ。一機は死にかけた。爆弾使ったの、あんたか」
「ああ、それは…、内緒です。一つ言うとしたら、火薬は跡が残るので僕は好きじゃないとだけ」
そういいながら、シュヴァリエディアスは立ち上がった。 ほっと胸をなでおろしたドリフトを怪訝な目つきでウルトラマグナスが見る。
「さて、僕らが居所にあなた方を案内しましょうか」
―――――
肆章 完
鳳櫻月雨