「マグナス、ラチェット、こっち来て!ドリフトは今すぐこの区域立ち入り禁止にして、ブレインストーム呼べ!! 十分後会議!」

すぐさまブロードキャストへ連絡を取って区域を閉鎖しその間に、ブレインストームの部屋へ走ってミニチュアパーセプターを愛でていたブレインストームをロディマスの元へ引っ張って……
ああだこうだと対応に追われたドリフトが漸く解放されたのは日も変わりそうな時間帯であった。体内におしこんだ布の存在もすっかり忘れ去っていた。
ばた、とベッドへ倒れ込み受容部蓋を外して内部を煩雑に漁る。 ずるりと出てきた、布の床に落とした。 酷く疲れた気がする。目の前も、暗くなっていくーーー ぷつんと、視界が暗くなった。

-----

五月蝿い。眩しい。まだ寝かせてくれ。そう思いながら、顔をしかめたときいきなり頭を叩かれた。

「い、たい、」

何かと思って目を開ければ、すごい力で抱き起こされた。

「痛いよラチェット」
「お前は何をしているんだ」
「ラチェット、首が締まって死んじゃう」

ラチェットの背に腕を回して、そして呟く。

「ごめんね」
「何に対してだ、それは」
「…… わからない。でも、ごめんほんと」
「待っていても来ない、部屋に行ったら倒れてる、お前は一体なんなんだ。私に恨みでもあるのか?」
「心配してよ」

そう言えば、何時だって彼は心配してくれたなあと他人事のように思う。

「ありがとう」
「訳のわからん感謝だな」
「いつも心配してくれてありがとうって意味」

ラチェットは何か言いたげだが、それを遮ってドリフトがきく。

「俺、どんななの」
「体液垂れ流してたせいで、循環不良だ」
「死ぬの?」
「死なん。私がいるからな」
「頼もしい」

軽口を叩きながら、思案する。結局ラチェットと今日、話せたのは良かったと。
疑問を叩きつけても良いだろうかと、ラチェットに言う。

「ラチェットは、俺の事なんで心配してるんだ?呆れたりしないのか?」
「呆れてはいるが、お前は子供だから、しようがない」
「あんた、俺が誘った時も子供だ子供だ言ってたな」
「そうだ、私は子供の相手をする暇はない」

その言い種に少しの苛立ちが込み上げる。まるで、相手にされていないのが腹立たしい。

「…… あんたを誘う位には好きだ」
「笑わせるな、ドリフト」

心底馬鹿にしたようなラチェットの口調にむっとくるが、文句は言わずに次の言葉を待つ。

「一時の感情に流されるだけなんてお断りだな」
「…… え?」
「寝ろ。」
「まってラチェ、」

にっこり笑ったラチェットが、ぎりぎり音をたててノコを回す。その姿に慌てて口を閉ざした。
ラチェットが立ち去る背中に、ドリフトが声を張り上げた。
「… おやすみ!」


-----


ドリフトには悩みがあった。常に悩みがある状況ではあるのだが、今回の悩みは普通と違う。
けっこう、死活的問題だ。 だが、いわゆるデリケートな問題なので…

「困ったロディマス」
「ドリフトが困るの珍しいな」

ロディマスは背伸びをし読んでいた書類を端へと寄せ、ドリフトに向き合う。我らが船長の本日初のサボタージュだ。 因みに仕事が始まってから、15分しか過ぎていない。

「ほんとに、困ってる」
「なんだ、早く話せよ」

戸を見て、耳を済ませて、誰もいないと確認してドリフトは言う。

「不感症になった」
「それは大いに問題だな」

ん?とロディマスが首を傾げながら、ドリフトに聞く。

「接続は大好きだろ?」
「大好きって…、まあ、何も考えなくていいから」
「なのに、不感症?可笑しくないか?そういうのは、ラチェットとかに相談したら」
「ラチェットには知られたくない」

そのいいよどむ姿に、ロディマスがさらに話を掘り下げていく。

「なんかあったのか?」
「少し前に結構派手目に接続して、中に傷を作って…」
「は?誰にやられた」

ロディマスが怒りを露にし、ドリフトはそれはいいんだけど、と話を続ける。ロディマスは納得していないようだが、本題とずれているので今は無視する。

「ラチェットに治療してもらってその時から、なんか変なんだ。最中ずっと、快感が薄くて頭のどこかに酷く冷静な自分がいる」
「ラチェットが線弄り回したんじゃ?」
「まさかそんなことしないよ」

あの人には相手にされていないしと付け足すドリフトに、ロディマスが呆れたような顔をした。

「仲良しでいいな」
「仲良し?そう見える?うーん、ラチェットと話すのは楽しいよ」
「ラチェットの事は?考えながらしたりしないのか?」

唐突なロディマスの台詞に、 ドリフトが驚いて止まる。 そんなドリフトに、何がおかしいのかとロディマスが首を傾げなる。
ロディマスに、ドリフトがしどろもどろになりながら言った。

「い、いや、そういうのは、ちょっと…、」
「何が駄目なんだよ。 ラチェットに接続しようって言ったんだろ?」
「言った、言いはしたけど、でも、相当昔だ」

彼を考えながら自慰を行うなど越えてはならない一線だと思った。
何がとかどうしてとかではない。駄目なのだ。

「駄目だって」
「何が?いいじゃん別に」
「俺はそういう目で見ている訳じゃない!」
「落ち着けよ」

熱くなっているドリフトとは対象的にロディマスは至って落ち着いていた。
罰が悪くなって視線を下に向けたドリフトに、ロディマスが口を開く。

「ドリフトは、なんでラチェットに接続しようって言ったんだよ」
「…… その程度には好きだった」
「なら今は?嫌いなわけ?」
「……」
「考えるんだな」

ロディマスの本日初のサボタージュはドリフトに良い結果となった。

鳳櫻月雨