「待てないのか?」
「う…、、」
「ドリフト」
「っ…、 わかった…、よ…」
その言葉に、 ラチェットが笑ってドリフトから離れた。
「先に、シャワー室に行ってなさい」
どうしてと尋ねる前に、 ラチェットがベッドを指差す。 官能油と、生殖油と桜色の潤滑剤の散らばったシーツに、 頬を染め、同時にじゅんと、受容部も濡れる。 恥ずかしさと、 先程まで感じていた快感を思い出してしまった。
「う……、」
「どうした」
「なんでもない、」
「全部ドリフトと私のだぞ」
「しってる!」
急いで受容部蓋を閉めて立ち上がり、 早々にシャワー室へと引き上げた。 はあ、と排気してずるずると壁伝いに腰を下ろす。
受容部蓋を、 そっとずらすととろりと官能油が溢れた。 確かに感度はいい方だと思っていたが、 こんなによくなくてもかまわない。 そっと、 指を這わすと受容部はするりと指を受け入れた。 ぐるりと指を回転させるとどこもかしこも官能油で濡れていて、粘液が絡みつく。
「う、 わ…、」
指を引き抜けば、てらてらと輝くそれに感嘆が漏れる。 そういえば、さっきラチェットがなめていたなあと、思っているうちに指を口腔へと招き入れていた。
「ふ、ちゅぅ… ぴちゃ、くちゅ… はあ、んんぅ…、」
おいしくなんてないと思う。 どちらかと言えば、 まずい。 自分のだしと思う反面、 その味が癖になりそうだった。
「は、 あ、んぅ…、 ちゅる、じゅ…、 んちゅ…、」
すりすりとタイルに受容部をこすり付けてしまっていた。 視線を下に向ければ接続機も起ち上がっていて、とろりと先走りが零れ落ちた。
「ん、っぅう…、らちぇっとぉ、らちぇ、っとお…、」
我慢しなければ、 だめだと必死で天井を仰ぎ見る。 一人で気持ちよくなるのは嫌だった。せっかくラチェットと一緒なのに。はやくきて、と。
唐突に昔の記憶が甦りつきんと胸が痛む。 以前もおいて行かれたことがあった。また置いていかれてしまったらどうしたらいい? もう傷付きたくない。 でも、この幸せを手放したくない…
「あけるぞ」
ドリフトが返事をする間もなく、扉は開かれてしまった。 視覚器がかち合った瞬間、 ラチェットが驚いて止まる。
「どうした、ドリフト」
「…、なんでもない」
「なんでもないのに泣くのか?」
「わかんない、待ってたら泣けてきた」
「何?」
「… 待ってて、そしたら昔のこと思い出して泣けてきた、 おいてかれたんじゃないかとか嫌われたのかなとか…、」
そういっているうちにまた雫で視界が覆われて滲む。 ちゃんとラチェットがいるのかさえ怪しくなってきた。
「…… まったく…、」
ため息をつきつつラチェットがドリフトを抱き締めた。 本当に何をしているんだろうと悲しくなる。 こんなに、 傍にいるのに。
「少し目を離すとすぐこうなる。 やっぱりドリフトはだめだ放っておけない」
「ごめ、 ラチェットはそんなことないって思ってる、 わかってるのに」
「嘘をはけ。わかってないから、 なきだしたりするんだ」
こうなるのは俺も想定外だったんだと、 伝えようとしたが、口をついてでたのは違う言葉だった。
「傍にいて」
「ああ」
「一緒がいい」
「ああ」
ラチェットにすがったドリフトをもっと強く抱き寄せたラチェットの背に滴が落ちていく。
流れて伝う雫を見ていると、以前ラチェットがいった言葉が頭に浮かんできた。 お前は私のものだと、 ラチェットの術中に見事に落ちたことを。
「…… ふ、ふふ、」
「泣いたり笑ったり忙しいな」
「そう言えば、 ラチェットはすごく計画をたてるのがうまかったなあって、 そうだよ、あんたから逃げるの難しいんだよね」
よくよくかんがえてみれば、 ラチェットはどうあってもドリフトを逃す気なんてない。それでも、 不安になるのは己が幼いからか、それとも… まだ足りないからか。
「俺にわかるようにして、」
「ドリフト」
「すぐ忘れちゃうんだ。 だから もっと、」
ラチェットの唇が視覚器に触れた。 ちゅ、と吸いとられた滴がまた後から落ちるのに、 ラチェットが聴く。
「どうした?」
「えーっと、 今度は嬉しいのかな」
「忙しないな」
ちゅっちゅっと軽い音をたてて、 視覚器にキスをされ、 口端にもキスを落とされる。 もっと、 とねだる前に唇にキスされる。
「ん、ラチェット」
「… 、ドリフト」
「…… すき、 」
ラチェットの舌と絡まる感覚に酔いしれながら頭の中で好きだと呟く。
「ん、ちゅ、すき、らちぇ、す、き」
「ああ、 私も好きだよ」
「うれしいなー」
ラチェットが好きだと言うのが、嬉しくて自然と綻ぶ。
そうか、好きか、好きなのか。と今更ながら、 噛み締める。
「ラチェット、しよ?」
「ここでか?」
「これくらい狭いほうが今の俺にはいい、 広いとこ行ったらまた泣きそうだ」
「なら仕方がないな、 ちょっとま… いや、いい」
ラチェットが待てといいかけたのを、 飲み込んで首を振った。 ドリフトも待てるよと言おうとしてあわてて口を噤む。 ついさっき待っていられなくて泣いたのを思い出したからだ。
「ドリフト」
ラチェットに促されるままに立ち上がると抱き締められた。 その背に手を回して抱き締め返すと、 ようやく安心した。 シャワー室の狭い空間が心地いい。 寝室にいたときも、ラチェットしか見えていなかったのだが、今はそれより距離が近くに感じられた。
背に回っていたラチェットの手が、 余すところなく撫で擦るのに、ぞくぞくと機体を奮わせた。
「ふぅ、ん…、ラチェット…、 」
「ドリフト、 好きだ」
「うん、 おれも好き」
鼻にかかった声が漏れて、 シャワー室に反響する。
「あんたの声、すごく聞こえる」
「私もドリフトの声が良く聞けるな」
「っ、、…、 あ、あ、ぅう…」
背を撫でていた手が、下へと移動し受容部蓋をずらして内部に入り込む。 つぷつぷと指を出し入れしながら、 時折、内部の配線を擦りあげて悦が生まれる。
「は、 はふ…、あ、らちぇっとぉ」
「ドリフト、 ここにいるから」
「うん、 …、 ひっぅ!」
配線を押し広げるように、指を動かされて内部に外気が触れた。 ぴちゃ、くちゅ、と猥らな音が響いて、思わず頬に熱が集まる。
鳳櫻月雨