他者のその行為を、 浅ましいと思ったことはなかった。 だが、 何故、己がするとなるとこうも浅ましいものだと感じてしまうのだろうか。
生理現象だと受け入れるにはあまりにも…、 そう、あまりにも背徳的すぎるその行為はじわりじわりと理性を溶かしていく。
−… こんな所で。
そう思う反面、膨れあがったその欲求を満たすための場所などどこでもいいと思わざるを得なかった。
ぐちゅと、 聞きたくもない水音がして、 空間に響き渡る。おぞましいほどの熱に、 犯されて夢中で、 胎内を引っ掻き回す。

それはあまりにも乱暴で。
甘さやいたわりなど、欠片もない煩雑な動作だった。

もしかしたら、 傷を作ってしまうかもしれない。 一種の痛みすら伴う行為ではあったが、 それでいいとさえ思ってしまう。 我慢を強いた機体は傷みを伴うほどの煩雑ささえも悦だと感じていた。
何度も何度も引っかき続ければ、 漸く絶頂が見えてきた。 早くおわればいいと、 指の動きを早めた。

「そのようにぞんざいに扱ってはならぬといったはずですが」

今は聞きたくもない声に、 ダイアトラスは唇を噛み締めた。

「傷を作ります」

胎内を荒らす手をつかまれ、 さえぎられた。

「…、 アックス」
「いつでも呼べといったはずです」
「…、 アックス、 出ていけ」
「何故?」

夢中になるあまり、 失念していた。 それとも、 アックスが気取らせないようにはいってきたのか。 いずれにせよ、 今のダイアトラスには最も現れてほしくない人物だった。

「こんなことのためにお前を呼びたくはない」
「俺は構わない」
「アックス」

内部を荒らす手を、 アックスが取り上げて恭しく口付けた。 官能油塗れの指を口に含み、 ねっとりと舐ぶる。

「よせ」

ちゅ、 と音を立てて、 アックスは手を離す。 かち合った視線に、 ぞくりと背筋に悦が走る。 それら総てが浅ましい。

「いったはずです。 そんな風に扱ってはならぬ、 と。」

散々弄り回した受容部に、 アックスの指が触れた。 幾度か淵をなぞり、 自らの指に官能油を絡ませる。 そろりと入り込んだ指は優しかった。

「アックス、よせ、!」
「見ていられない」
「やめろ、 アックス…、っぅ!」

ぞくりと、 受容部から広がる悦に、 思わず声が漏れる。 それが、 羞恥を煽った。

「よ、…、 よせ、」
「しゃべると声が漏れますが?」
「…っ…!」

アックスの言葉は至極的確だった。 仕方なしに、 唇を引き結び声を立てぬように注意を払った。

「惜しいな」

何を惜しがっているのか。聞くまでもないのに、 聞きたくてたまらない。
アックスの指が、 丁寧に胎内の配線を荒らす。 先程己がやったときよりも大分気持ちが良かった。 だが、 それを認めたくない。
アックスの指が、 己を絶頂へと導こうと動くたびにいいようもない嫌悪感が浮かぶ。

「あ、あっくす、!」

はしたない。こんな風に… 寂しがることが。

「お優しいですね、 ダイアトラス様」
「ちがう、 ちがう…っ!」
「いいえ、 あなたは優しい。 故に、 傷つく」

アックスの声は総てを肯定してくれる。 それが、 たまらなく心地よい。
次第に、 どろりどろりとした本能的な欲求がたまってくる。 とんとん、 と一定の間隔で、 アックスの指が下腹部を叩く。その間隔に、 理性が溶けていく。

「俺はあなたと接続はしない」
「…、 な、ぜ?」
「さあ、 何故でしょう」

心地よいと、 声には出さないながら思う。 アックスの指から伝わる温度に高まる。

「う、あ、! よせ、よせ! く、あああ!」

機体を強張らせて達した。 受容部のみで達したこの感覚はすぐさま引いてくるわけではない。 何も考えられなくなった。

「あ、あっくす、あっくす」
「…… ダイアトラス様」
「アックス、あっくす、!」

視界が歪む。 アックスに、 縋る。
せめて、 拒否してくれればと思った。 だが、優秀な彼は、 総てを悟っている。

「俺で、 慰められるならばいくらでも」

アックスの常套句は、 刺さる。

「、 おまえをそんなことにつかいたくない…!」

愚かな願いは いつもとどかない。

end???
鳳櫻月雨