世抗ー没まとめ


没 �@


「なあ降谷。先輩はきっと自分から絶対に言わないだろうから、俺が言うんだけどさ。……お前が割った角煮の皿、あれ、先輩が小さい頃に火事にあった後、燃えてなかった倉庫の中から持ってきた皿なんだって」
「火事?」
「そう。先輩以外の家族はその火事で全滅。火をつけたのはフォークだった、って聞いてる」
「そ、れは」

つまり、降谷が割った皿は遺品ということになるのではないか。ザッと血の気が引く。

「形あるものはいつか壊れる、なんて先輩は良く言ってる。だから多分、今回の事も「仕方ないな」で済ませてるんだと思う」
「……そうか。でも、それで済ませられることじゃ、ない」

作中であんな感じだったのに更に追い打ちをかけるのは、かわいそうだなって。没。



没 �A

よく噛んで食べましょう、とはよく言ったもので。消化器官での食物の消化を助けるための動作だけではないのだ。

「健康状態にも直結する。顔の筋肉だって、そう」
「そういえば、そんな話もありますね」

ものを食べる、という動作そのものが身体の健康状態にもつながってくる。
咀嚼の回数によって顔の筋肉にどのような影響があるのか。顎を動かす、口を動かす動作は脳の活性化につながる。そして顎や歯の変形リスクの低減も上げられる。……まあ、味のしないガムを永遠に噛んでいられれば、ある意味解決することではあるのだが。
結加理がそう簡潔に告げれば、考えたことなど無かったのか目を瞬かせていた。

これ、必要か? と思ったので。没。



没 �B


手元にある茶色のグラスに用意されたのは麦茶なのだろうが、やはり降谷の舌は味を感知できない。そう思い小さく息を吐く。

「これも、違うんですね」
「……え、いや、ごめん、それただの水」
「えっ」
「はははっ!」

降谷の言葉に萩原が弾かれたように笑った。何を隠そうグラスを選び、その中身を用意したのは萩原である。
沈んだ表情を見せた降谷に申し訳なさそうな顔をしたのは結加理の方だ。任せなければよかったかなぁ、などと頭の隅で呟く。
パッと見た色で騙される。ある意味で引っ掛けのような、視界の情報で誤認させる現象。まさかこの状況下でやるとは。

萩原くんは今回の話を経ての原作時間軸ならともかく、相手が傷ついて落ち込んでると発覚した時にこんな悪質なことはしないので。没。


没 �C

ピンポーン。無機質なチャイムの音が鳴る。──この時間に。

「」


フォーク襲来。これ以上SAN値を削っちゃうのもな、可哀想だな、と思ったので。没。



没 �D



没 �E

うんざりした様子を隠そうともせず結加理は鉛筆を握りしめる。ベキリと小気味のいい音を立てて真っ二つに折れた。存外握力が強い。よほど腹に据えかねているようだ。
それを苦笑いしながら萩原が抜き取る。


物理だけじゃなく空気クラッシャーの称号を与えるにはまだ早いかな、って。


没 �F


「聞いたことあるかと思うけど、ケーキの味はそれぞれ人によって違っていて、同じ味は無いらしいんで。あと、今の私と明日の私は味が違う、ってことみたい」
「もしかして、さっきフォークが味を感じる成分の特定が難しいっていうのは、個人差だけじゃなくて……」
「そ。これのこと。さっきも言ったような気がするけど、体調不良、精神的負荷、服用する薬、……変化の要因は大方がここら辺かな?」

この「味」の違いを求める収集家のフォークが複数存在しているらしいのだ。恐ろしい話である。
なお、結加理にとっては全く他人事ではない。広く知れている分、それだけ厄介な連中にも目を着けられていたりするのだ。

「だから、誘拐の時に薬……睡眠薬とかが使われることはあまりないみたい」
「……ええと、何で知ってるんですか?」
「あー、前にちょっとね」

サラッと付け加えた結加理に対し、思わずといったように諸伏が訊ねた。
連れ去られた場所でベラベラと喋ってくれた犯罪組織の男が数名いたのだ。その後、結加理の緊急通報を受けて駆け付けた警察官に救助されたため、取り返しのつかない事態にまでは至ってない。本当にギリギリのところではあったが。
綱渡り状態の一端を感じて松田は柳眉を顰めた。


長くなったから削った部分。


- 32 -

前次

いずれ散り逝く命としても
トップページへ