源氏兄弟とまた会おう
(刀剣崩壊・転生表現あり)
「あにじゃ、、、これでは主が困ってしまうかもしれん」
「そうだねぇ、こんな格好じゃ、、」
大きな木に凭れかかって、僕たち兄弟は主の怒った顔を思い浮かべながら話をする。
検非違使以上の強敵を政府が確認したことを今の主に言われたことは、昨日のことだったか。審神者会議、というもので政府から伝達があり、優秀な本丸が一つ、崩壊してしまったということも知っていた。その中には、僕たち兄弟も居た、ということも。そして、僕たち兄弟が揃っている本丸にしか姿を現さない敵だということも。
「今度は僕たちの番なのかもしれないね」
そう言えば、棚丸…僕の弟は、「あにじゃ、そうなのかもしれないな」と、相槌を打ってくれる。検非違使、聞けば全本丸が恐怖し、少しでも怪我をすれば撤退するものであろう。僕たちの本丸の主からも、「検非違使と会えば即撤退するべし」と伝達されたのはいつのころだったか。すぐ忘れてしまう自分の記憶を必死でたどりながら、結局たどり着く結果は「いっだったけ」となってしまう。これでは、何時まで経っても、主に「髭切は膝丸がいなきゃ何もできないの」と言われてしまうではないか。
あの、主の勝ち誇ったような顔は可愛くて好きなんだけど、いい気はしないんだよね。
主から聞いた、崩壊した本丸の僕たち兄弟はこの敵と出会って何を思ったのだろうか。ふと、そんなことを考えてしまうから、そんな自分が嫌になってしまう。
先程、弟を庇って無くなってしまった右手を見つめながら考えてしまう。横にいる膝丸も、無くなってしまった片足を見つめているので、きっと同じことを思っているんだとおもう。
「今帰ってしまったら、皆大騒ぎかもしれぬ」
いつものように。ほんとうに、いつもと変わらず会話する膝丸を見つめて僕は思うんだ。
昔から、何度も名前を変えられ、変わり。政府から、「敵がいるので一緒に戦うために力を貸してくれ」と言われたとき。その時の僕は、「弟と会えるならば」と承諾して、刀剣男子になった。現超したとき、弟がいたときは嬉しかった。そして、こんな暖かな本丸に呼んでもらえたことが嬉しかった。
主は、膝丸みたいに心配性で。軽症でも負えば、本丸に帰ったら速攻手入れ部屋へ連行されたっけな。今は、軽症さえも負わなくはなったけれど、当初は毎日手入れされていた記憶がある。主も、鈍感だから毎日短刀たちと遊んでは軽症並み
の怪我をしていて、初期刀の歌仙に怒られていたっけな。
歌仙に怒られるのが嫌で、刀剣男子達に追い付こうとして、訓練のために無理して山伏の修行について行って。一緒
に怒られたこともあったっけ。
色々なことを思い出して、小さく笑えば膝丸が不思議そうに首を傾げてくるものだから、思い出した内容を話せば一緒に笑ってくれた。
「ふふっ、うちの主は本当にお転婆さんだね」
「あにじゃも、めははなせないがな、、」
もう、膝丸の呂律は回ってなくて。消えてしまうのはもう目前だとわかってしまう。
だって、僕の片足もひび割れて、散ろうとしているんだもの。きっと、膝丸はそれ以上に消えようとしているんじゃないかな。
「あにじゃ、おれは、あにじゃとあえて。しあわせだ」
「うん、僕も膝丸とあえてしあわせだよ」
「あにじゃは、今代のあるじで、よかったか」
ああ、横にいて確認できていた体温が低くなっていくのが分かる。ゆっくりと、でも確実に消えていく暖かさに、「もう、僕たちも長くはないんだな」とまるで他人事のように思ってしまうものだから僕は薄情な刀剣なのかもしれない。
「あにじゃは、はくじょうもの、ではないぞ」
「ひざまる、、」
僕も呂律が回ってこなくなってしまった。擦れた視界から見えるのは桃色の花びらばかりだからうっとおしいったらありゃしない。
その花びらは、僕たちが崩壊していっている証拠なので、今更になって自分自身も長くないのであろうということに気づいたのだ。
「あにじゃが、あるじとはな、しているときの、おれはうれしかった。あるじは、あにじゃがすき、だ」
そんなこと、知ってるよ。だって、主とは人間でいう、恋仲だったのだから。
「おれはあるじも、すきだ」
それも知っている。だって、唯一僕たち兄弟が喧嘩したのって主のことしかないじゃないか。
「あにじゃもすきだ」
知ってるよ、誰よりも僕を知って、お前を知っているのは僕なんだから。
「そうか、それは、よかった」
なにが?と言いたかったが、振り向いた瞬間には膝丸の体温と姿は消えていて。
自分の名前と膝丸の名前を呼ばれた、気がして振り向けば主のがこちらに走っている姿が見えて。
「あるじ、」
その先の音は桜の舞う音でかき消された。
「今日から、新しい家族になる子だよ。仲良くするようにね」
父子家庭で育った僕たちは、父が再婚というものをするらしく、ある場所に連れてこれた。
見覚えのある純和風の庭園に、膝丸と顔を見合せたのは今でも覚えている。
そして、そこにいた人にも見覚えがあったのだ。
「髭切!膝丸!よろしくね?」
困ったように笑う君に、やっと会えた、と抱き着いた。
END
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