サラシバ


抜粋@私は架空の人物です。


「ねぇ、実を言えば、私はこの世に存在しないんです。
 私という個人は、所詮、私の内部が作り出した架空の人物に過ぎないんですよ。私の本質なんて、誰にも分かるものではありません。私ですら分からないんですから。あなたは自信を持って「これが私だ」と言えますか?

 私の本質なんてもの、本当は何処にも存在していないんです。あなたが今、会話をしている相手は偽者に過ぎません。

 手を触れれば分かるとか、見れば分かるというのは肉体に限ったことですよ。目を閉じてください。私が沈黙したとき、あなたは私が存在する事を証明できますか?

 存在するってことはつまり、相互観測によって証明されるんです。私自身で私を観測するか、私以外の誰かに私を観測してもらわないと、私はこの世に存在できないんです。あなたは私を観測できますか?

 でも多分、本質までは観測できないと思いますよ。これは私とあなたの間に限ったことでも、私だから、あなただからというわけでもないんです。私とあなたを含めたこの世のほとんどの人間は、おそらく盲目です。加えて、人間は多面性を持つ生き物です。捉えたと思っても、それはもしかすると、本質ではなくて、私の内部が用意したあなた専用のスケープゴートかも知れないでしょう? それが本質だなんて、一体誰が証明するんです? 本質なんて、誰にも観測できないんですよ。
 だから私は、この世に存在しないんです。」

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