01


月夜のフィールド、はかなく白い少女は誰かを呼んでいた。

「……ねぇ待って、待ってってば」

呼んでいる少女は大体5歳くらいだろうか。しかし、誰もいないのに叫んでいるのはとても不可解だ。

今にも消えそうなその姿は誰も見えない。
見えないからと言い、幽霊と決めつけるのはまだ早すぎる。

「私、待ってるんだよ」

月夜の丘。明るい夜、純白色に染まる雑草。
少女は時刻も分からないまま、走りゆく。
ただ、追い求めているモノを探して……。

少女は時が止まったような瞳になっている。

「私……しろいねこちゃんをさがしてる」

悲しげな瞳に似合わない赤色のチュニック。
髪はミディアム。

さがしてるは、誰に呼びかけているかも分からない。

「ねぇ……どこ?」

月夜の丘には人1人もおらず、少女はすこし泣くのを抑えつつ、ねこを探してる。
白いねこは、伝説の本にのこされた生き物。
かつて月夜の丘で羽ばたいていたらしい……。
少女は探すためにここまでこぎ着けたと言う。

誰もいないなか、叫ぶ少女は疲れ果てる。

「……しろいねこちゃん、どこ……ぉ」

悲しく、倒れ果てる5歳の少女。
死んではいないみたいで、幽霊でもない。

このままでは死んでしまうのではなかろうか?
死に果てるのだろうか、そのまま骨になりゆくのだろうか。

「ね……」

最期かも分からない。幼い心臓は止まってしまうのか。

この世を知り尽くしたこともない、無垢な少女は無惨に命をもぎ取られるのだろうか。

魔物に……。

少女は目を閉じた、その奥では、見つけることをようやく諦めたのだろう。
もう目を開けて動くことも出来ず、そのままぽっくりと死んでゆくかもしれない。

まだ天国にいくのは、早すぎる。


そのとき。白い粉が一面を照らした。
白い粉が魔法のように降り注ぐ中、白いねこが少女のまわりを歩いた。

少女の口元に、清められた水が降り注ぎ、それはめぐみの雨とも言える。

いまにも消えてしまいそうな夢の光景。お目にかかれやしない。終わってほしくなんかない夢……。

なんの祝福なのだろうか、なんの伝説なのだろう。

めぐみの雨を降らした後、少女は目を再び覚ました。

少女はまわりを見渡し、笑った。

しろいねこの存在を確かめ、かすかに消えていった。

はかなく散った白いねこと少女は、月夜の丘の大木の下で可愛がっていた。

それを見れるのもかすか、一瞬だけの光景を目に刻むことが出来た。

まぼろしなんかじゃ、なかった……

傍観者の僕は胸に手を当てて、少女みたいに透けてはいないか、存在を再確認した。

……ありがとう

聞き逃さなかった、その儚い声を────。

               おわり

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