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「シダレザクラ、あんたの決意は素敵だと思うさ」

「……本当ですかっ?」

月夜に満ちる夜、テントの前で話し合うふたり。

「おう」

蜜月宵歌(みつづきよいか)というのが、団長。

シダレザクラは、団員。

満ちる華というのが団の名前。

「……また、活動していいんですか?」

「おう、好きなようにやれ」

腕を組んでにやりとする彼女の顔はとても綺麗だった。

闇夜に魅せる笑顔は、とっても素敵。

「好きなように……?好きなようにやったらいいんですかっ?」

「この団は自由だろ。客が惹かれるような芸をすりゃあいいんだわ」

だるそうにしゃべる団長。

「……」

私は何も答えられなかった。この質問に答えはあるのか。

「……シダレザクラ、あんたが戻ってきてくれてうれしい。今は伝説女優のカロンはもう戻ってこねぇからな。まぁ、それより中入るか」

伝説女優のカロン。
カロンはもう、この団の中に居ないんだな。

居てほしかったけどそれはしょうがないな。

団長と一緒にテントの中に入っていった。

「……私のことは宵歌でいいさ」

テーブルの上に出された紅茶から甘い香り。
多分、商人から頂いたのでしょう。

「シダレザクラ、お前はどうしてここに?」

「……芸の無い生活など、もう疲れたのです。私は芸で生きたい」



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