ぶどうが丘高校へ行こう!
SPW財団の根回しで、億泰だけではなくニケも形兆も今日からぶどうが丘高校の三年生になった。自由に出歩かれるより一ヶ所にまとめて置いた方が監視がしやすいんだろう、それに抵抗する理由も力もない、と形兆は渋々ながら高校生に収まることを承諾した。ニケも無害とはいえ監視対象だ。紺色の制服に身を包んで、形兆の隣を歩いている。
「形兆くん、学生カバン似合わないねえ」
「黙ってろ」
「お弁当作ってあげたの私ですけど〜?」
「恩着せがましい、頼んでねえだろうが」
「でもきちんと持っててくれるんだから、形兆くんは優しいねぇ」
「ないよりはマシだからな」
「もう、億泰くんなんて泣いて喜んでくれたのに〜」
通学路を行く他の生徒の視線を一心に浴びながら、二人は並んで登校する。改造制服に高校生とは思えない風貌の大男に、その凶悪さに臆することなく隣を笑って歩く凡庸そうな少女。
……果たしてニケは凡庸か、いや否。
スタンド使いであることはさておき、形兆も知らなかったのだがニケは高校が泣いて欲しがるような逸材だった。
編入試験の結果は、形兆を遥かにしのぐ高得点。解答の記入忘れで満点を逃したが。そのあたりはニケらしいと形兆は思った。
「高校って、中学校とおんなじように座ってればいい感じ?」
「なんでそれで俺より点が良かったんだ……?」
実を言うと学力でニケに負けたことが彼は少し、ほんの少〜し、悔しかった。……本当にほんの少しだけだが、本当に。
「あの家がそういうところだったからかな〜」
「……そうか」
「本妻の子より出来てもだめだし、出来なくてもだめだから、調整するのが大変でね〜」
「もういい」
「ん、じゃあおしまーい」
親戚のじいさんが死んで、遺産分割のために集められた血縁の中で、取り分けニケは浮いていた。扱われ方も、瞳の昏さも。だからちょうどいいと思った。それがまさか、こうなるとは思わなかったが。
「そう言えば、形兆くんとクラス違うんだよね」
「それがなんだ」
「お弁当一緒に食べたいから行ってもいい?」
「だめだと言っても来るんだろう、お前は」
「だって、形兆くんもひとりぼっちご飯は辛いでしょ?」
「いや全くなんとも思わんが」
「お弁当にたこさんウインナーが入ってても?」
一人で昼休みにたこさんウインナーを摘まむ虹村形兆。相当面白い絵面だ。
「デザートのリンゴはうさぎさんにしてあるよー」
「ふ……ふざけてんじゃあねえ」
流石の形兆も言葉に詰まった。バカだ、この女は本当にバカだ。
「大真面目だよぅ〜…………エーッ虹村形兆くんって怖そうだけど意外と可愛いところもあるんだ〜ギャップ萌え〜かっこいい〜キャー」
「何の真似だ」
「クラスの女の子の真似かなぁ。形兆くんかっこいいからすぐにファンクラブできちゃうよ、そしてファンからの質問攻め」
「馬鹿馬鹿しい、そんなくだらんことに付き合ってられるか」
かっこいいのは否定しない、虹村形兆は自分の価値をよく理解していた。
「そこで私を風避けに置いとくのはどうでしょう」
「く……試しに使ってやる。妙な詮索をされるのは御免だからな」
「じゃあお昼休みに形兆くんのところに行くね〜」
案外ニケは策士だ。形兆の扱いをよく心得ている。
結局ニケの希望通りに事が運んでしまったことには不満があるが、別段この女を嫌ってはいないので本人の主張通り風避けになるならちょうどいい。
ついでにニケが妙な輩から色々詮索されるのも面倒だ。自分の目の届くところに置いておくべきだろう。
それ、もしかしなくても独占欲ってやつじゃないんすかァ〜?
東方仗助がいたならそう余計なことを言い、ぶっ飛ばされていたに違いない。
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