拝啓、救世主様

 

突然ですが、私はHLが嫌いです。毎日飽きる事なく鳴り響く怒号も、そこら中に落ちている知らない人も、壊れたビルの残骸も、誰かを犠牲に成り立つ笑顔も。全部嫌いです。

父の仕事の為に移り住んでからはや3年が経ちましたが、一向に好きになれません。それどころかあなたと出会ってから益々この街が嫌いなりました。数ヶ月前、私が住むマンションの1階に花屋が出来ました。店主はとても優しそうな女性で、私が花を買いに行くたびににこにこと楽しそうに笑ってくれます。けれど彼女に会うと悲しくなるんです。私は自分勝手で、他人の幸せなんかよりも自分の幸せの方がずっと大切で仕方ありません。だから、あなたが傷付くことで成り立っている彼女の笑顔にすら、嫌な気持ちになるんです。

結構前になるんですが、スティーブンさんにこのことをお話しました。彼なんて言ったと思いますか?「君はクラウスのことがよっぽど好きなんだね」って笑ったんです。その時初めて、私はクラウスさんのことが好きなんだなあって気が付きました。鈍い鈍いとあなたに言ってきた私がまさかここまで鈍かったなんて驚きです。今思えば花屋に行く理由だってあなたと話がしたいからでした。

1度好きだと思ってしまうと目を合わすだけで頭は真っ白になるし、自然に話すことすら出来なくて。好きが増える代わりに毎日少しずつ何かを嫌いになっていきました。あなたに縋り、怒り、泣く女性。誰のかも分からない墓石に供えられてる花束。学校帰りの楽しげな小学生。あなたが笑うだけじゃ救われないこの世界が本当に嫌い。そんなことを考えてしまう自分のことすら嫌いになってしまいそうです。

拝啓、救世主様。あなたの優しさで救われるような世界で在ってほしかったです。


拝啓、救世主様
(私がいない世界がいつかあなたの優しさで救われますように。愛を込めて)


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