見つめられたら負け

 

人間として最低クズ男役満。すぐ女の人に手を出しては修羅場にしたりお金貰って半ばヒモの様な生活をしていたり、かと思えばカツアゲまがいのことをしたりと本当に最低なザップ・レンフロに押し倒されているこの状況を私はいまいち飲み込めない。否、脳が理解を拒んでいると言った方が正しいだろう。

「あの、退いて下さい」

ソファからただ天井を見つめ、手を伸ばしザップと距離を保ちながらそう伝える。視界の端にキレイな銀髪が見えた。褐色の肌に輝く銀髪は本当によく映える。

「何で敬語なんだよ」
「いや…」

退く気はないようだ。手が痺れてきた。ただザップの顔を見ないように目を背けながら話をする。焦って暴れるほどではないと自分に言い聞かせながら明後日の方を見つめる。そもそもこれは事故なのだから大袈裟に慌てる必要はないのだ。

「…あのさ、重たい」
「お前よりはそりゃあ重いだろ」
「いやそういう話しじゃないからアホ猿」

まじでアホかよ。意味わかんない。チラッと盗み見みるようにザップの顔を覗き込めば目が合いそうになり思わず逸らしてしまう。

「苗字」
「見るなよアホ猿」

「誰がアホだ」と距離を詰めてくる。私が力で到底勝てるわけなく、抵抗も虚しくあっさりと距離を詰められる。猿であることは否定しないのかだとか、とにかく言いたいことは山程あるがそれ以上になぜザップは退かないのか。私の首元にうずくまるザップの髪が首に当たりむず痒い。

「何してんのアホ!退いてよ!」
「んー、お前何かいい匂いすんな」
「さっきから会話噛み合ってないから」

ははっと乾いた笑いが聞こえる。手で押しのけようとするがびくりともしない。ザップは女の人の匂いがする。甘くて鼻に付く。

「今この状況で番頭が帰ってきたら俺殺されるかもしんねぇなあ」

耳元に響く声がいつもより低い。声をかけようとしたところでふと体が軽くなった。髪と同じ色の瞳と目が合う。無駄に整った顔に腹すら立つ。目が合えばもう逸らすことが出来ない。目にかかる銀髪が更に神秘的で、中身が最低クズ男役満なことすら忘れそうだ。

「…番頭のこと好きか?」

突然の問いに答えられずにただ眉をひそめる。少し笑ってザップが先に目をそらす。揺れる髪がキレイで手を伸ばせばサラサラと指を掠める。

「なあ、俺のことは?」

答えようとしたところで私よりも先にザップが口を開いた。

「悪ぃ、忘れて」

ギシッとソファが音を立てる。ソファから降り葉巻を咥え目を合わせることなく扉へ向かう。ザップが居た場所がまだ暖かい。自分が言おうとした言葉を思い出し顔が熱くなるのと同時にザップの背中に胸が痛む。呼び止めるより早く私の手はザップの背中を掴んだ。


見つめられたら負け
(忘れられないよ、好きだから)


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