隣にいさせて!
気の所為だろうか。ハルヒがホスト部に入部してから鏡夜の機嫌が良い。1人で思い出した様に笑っていたり、かと思えば今まで見た事もないような顔で怒ったり。幼馴染の私でも知らなかった顔ばかりで最近はどこか居心地が悪い。
「何1人で考え込んでいるんだ?」
「うわ、鏡夜!なんでいるの!」
ホスト部のソファでそんなことを考えていると後ろから声を掛けられて思わず声を上げる。私の発言が気に食わなかったのか鏡夜の眉間に皺が寄る。
「俺が部室に居ては変か?それとも何か、俺と顔を合わせれない理由でもあるのかな?」
ああ、この笑顔は怒っている時の笑顔だ…!
「ちがっーー痛っ!」
慌てて否定しようと口を開いた所で鏡夜の持っていたバインダーで軽く頭を叩かれた。バインダー越しの顔の見えない鏡夜はますます怖い。
「あの、鏡夜…さん?」
「…最近はやけに俺を見る度逃げる様に隠れてるが、白状するなら今のうちだぞ」
さっきとは違う声のトーンに少しドキリとする。思い違いだと言われてしまいそうだが、どこか寂しがっているような声に聞こえる。そんな少し弱気に見える鏡夜に何も言えず黙り込む。
「幼馴染だからと無理してそばにいる必要はないぞ。そもそも俺はこの学園にお前は向いてないと思ってる。今からでもーー」
どこを見て話しているのだろうか。
寂しげに見えるせいかバインダー越しの鏡夜がどんな顔をしているのか気になり、そっとバインダーを手で除ける。
「…なんだ?」
「いや、泣いてるのかと思って」
扉の方を向いていた鏡夜がこちらに顔を向けたと思えば、再度叩かれる。痛い。
「辞めたいならすぐに言え、俺が掛け合ってやる」
「鏡夜は、私が辞めたがってると思ってたの?」
「違うならなぜ俺を避けていたんだ?」
確かに元々入学するのは乗り気じゃなかった。鳳家の意向で仕方なくが大きかったかもしれない。鏡夜はずっと気にしていたのだろうか?
こんな嫉妬じみた感情でぐずぐず悩んでいた自分がバカみたいだ。
「私、鏡夜のこと全然知らなかったんだなあって考えてただけ!」
「は?なんだそれ」
本当に意味が分からないという顔をする鏡夜を見て思わず笑みが溢れる。
「鏡夜と一緒の学校、楽しくて好きだよ!」
「そうか、じゃあ良い」
隣にいさせて!
(知らない王様も知りたいから)