プロローグ


「………ねえ、サクラ。これ、何…?」

「え、えっと…。」

「あたし、"風邪薬が欲しい"って言ったよね?」

「うん…。調合、間違えちゃった、かな…?あはは…。」



事の始まりはついさっき。


木の葉は赤や黄色に色づき始めて、吹く風は冷たくなって。
季節の変わり目は体調管理に気をつけて生活しないと、なんて思っていた矢先に風邪を引いてしまって、親友のサクラにお願いして作ってもらった薬を飲んだ。

数十分経って、何となく頭と腰辺りに違和感を感じて触ってみると、ふわふわと柔らかい感触が手のひらに伝わってくる。

ん?おかしいな。あたしの髪の毛はこんなにふわふわしてないし、ショートヘアだから腰には到底届かない。それになんか…くすぐったい気がするんだけど…。

不安になって慌てて鏡の前に移動する。と、そこに映っていたのは、



「…は?耳?………え?!耳?!?!」



ぴょこぴょこと何とも可愛らしく動いているのは、何度見ても本来は猫に付いているはずの耳。ちょっと待って…!何で耳が付いてるの?!は、そうだ、頭の違和感がこれなら、まさか腰の違和感は…

慌てて後ろを向いてもう一度鏡を見ると、やっぱりというか何というか、ゆらゆらと揺れる尻尾が映っていた。



「ちょっと…理解できないんだけど…。なんで?!」



幻術でも見ているのか、なんて思って術を解く印を結ぶけど、目の前に映っている自分は耳と尻尾が生えたまま。

幻術じゃなかったら何?!もしかして食べ物?
朝ごはんに食べた物は昨日の残りだし、それ以外に口にしたものは水とサクラからもらった薬だけ。

ん?待てよ…?もしかして、風邪薬…?

それしか心当たりがないあたしは、"今すぐ家に来て欲しい"とだけ紙に書いて、サクラの元へ忍鳥を飛ばす。

ほんの数分後、心配した顔のサクラが家に入って来て、話は冒頭に戻る。



「なんっで風邪薬の調合を間違えたら耳と尻尾が生えてくるの?!」

「ご、ごめんななし!あたしにも何がなんだか…!」

「どうやったら消えるのこれ…?」

「こんな事初めてだし、分かんないわよ…。」



嘘でしょ…。

泣きそうな顔でサクラを見れば、もう一度ごめんと平謝りされる。ごめんで済めば警務部隊はいらないんだよ、なんて言ったらさすがに可哀想だからグッと心の中で留めて、代わりに小さく溜息をつく。



「どうしよう…。」

「見た感じ体に害はなさそうだし、治し方が分かるまでこのままいるしか無さそうね…。でも、結構似合ってるじゃない、ななし。」

「…嬉しくないんだけど。」



あたしは困ってるのにサクラは何故か楽しそうで、じゃあ早速調べるわーなんて言いながら家を出て行ってしまった。

なんで楽しそうなの、意味わかんない…!


しょうがない、とりあえず今日は家で大人しくしていよう。

半ば諦めて寝室へ戻ろうとした時、玄関からカチャカチャと音がして、今さっき閉めたばかりのドアが開く。









猫になってしまいました
(1番見られたくなかったのに…!)














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