奈良シカマルの場合


「おーい、気分どうだ………は?」

「…うわ。シカマル。」



ドサッと買い物袋が床に落ち、元々小さめな黒目は更に小さくなって、それはそれは驚いた表情でこっちを見ている。



「…おま、それ、何…すか?」

「敬語とかやめてくれる?あたしも分かんなくて泣きそうなんだけど。」



きっとお見舞いに来てくれたんだろうな。びっくりするよね、彼女がいきなりこんな格好になってたら。
ビニール袋から落ちた栄養ドリンクやゼリーを見ながら呑気にそんな事を思う。

とりあえず入って?と言えば、おう、と小さく返事をした後に素直にリビングへと足を進めてきて、ソファーに腰掛けるともう一度質問をされる。



「……ななし、風邪引いたんだよな?」

「うん、そう。サクラからもらった風邪薬飲んだらこうなった。」

「こうなったって…サクラの奴、調合でも間違えたのか?」

「その通り。ねえ、どうしようシカマル。」



そのなんとも言えない反応、すっごく嫌なんだけどな。どうせなら思いっきり笑うか騒ぐかして欲しかった。まあ、シカマルに限ってどっちも絶対にしない反応なんだけど。

自分よりびっくりしてる人を見ると冷静になるのって本当なんだな、なんて思いながら、ありがたく栄養ドリンクを口にする。木の葉限定のこれ、おいしいんだよなあ。体も軽くなるし。さすが、あたしの好きなものはちゃんと分かっててくれる。

何も喋らないシカマルを放置して次はゼリーを頂こう、と手を伸ばすと、横からぼそっと何か聞こえた。



「え?なに?」

「だからだな…その……、可愛いんじゃねーの。」



似合ってるぜ、と続けて言われて、恥ずかしいやらちょっと嬉しいやらで、風邪のせいで高かった体温がますます上がるのが分かった。



「なあ、触らせてくれよ、それ。」

「…うん、」



そろり、とシカマルの手が耳に伸びた時、コンコンと玄関のドアを叩く音が聞こえて、びっくりしたあたし達はサッと瞬時に距離を取る。ななしー?と外からあたしを呼ぶ声は恐らくサクラ。俺が出ると言って玄関へ向かったシカマルを眺めながら、風邪とは別の意味で上がった体温を下げるためにまたドリンクを口にする。



「あらシカマル。来てたのね。」

「あらじゃねーよ、ったく…。」

「ななしー?薬、新しいの持ってきたからシカマルに渡すわよー?今度は大丈夫だから!」

「あ、うん。ありがとサクラ。」

「じゃあこれ、よろしく。」



伝え忘れた事があったのか、シカマルに耳打ちをしてからじゃあねーと機嫌良さそうに帰って行くサクラをぼーっと眺める。視線をシカマルの方へとやれば、その顔は真っ赤に染まっていて。サクラの奴、一体何を言ったんだ。



「……シカマル?どうしたの?」

「…ごゆっくり、楽しんで。だとよ。」

「………は?」



ごゆっくり。それがどう言う意味なのかはこの歳になればさすがに分かるわけで。



「この薬が飲めるのはあと6時間後らしいぜ。」



なんて、いつのまにか真っ赤な顔から意地悪な顔になったシカマルがこっちへと戻ってくる。ちょっと待ってよ、あたし一応病人なんですけど?なんて声はもちろん聞いてもらえなくて。普段は恥ずかしいだの面倒だの言ってしてくれないのに、珍しくお姫様だっこをしてあたしをベッドへと連れて行く。



「ちょ、シカマル…!」

「サクラもああ言ったんだ。ゆっくり、楽しもうぜ。」



その後は、ただひたすらに責められて。翌日すっかり元気になったのは、薬のおかげか、シカマルのおかげか。










奈良シカマルの場合
(もう絶対間違えないでよサクラ…!)
(気を付けるわよ。…でも、楽しめたんじゃない?)













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