懐かしむ


「えーっと、服の段ボールはどこだっけー?」



まったく、引越しの準備というのは何でこんなにも面倒なんだ。

元々片付けとか整理整頓とかがそんなに得意じゃないあたしにとって、引越しは苦行そのもの。もう1週間もやってるのにまだ終わらないのはさすがにまずいと思うけど。めんどくさがって後回しにしてたら、気付けば部屋の明け渡しは明日に迫っていた。



「あーもうわっかんない。どこにしまったかなー…」



せっかく蓋をしたのにまた開けながら服の入った段ボールを探す。ああもう、めんどくさい。


何個目か分からない段ボールの蓋を開けた所で、やっと目的の箱が見つかる。



「あれ、こんなとこにアルバム入っちゃってる。」



自分の適当さに少し苦笑しながらも、何のアルバムだったっけ、とそれを開く。



「っ、これ…。」



もう何年も開いてなかったから中身を完全に忘れていた。
そこに写っていたのは、かつての恋人だったイタチ。



「懐かしいな…。イタチ、」



一族を殲滅しS級犯罪者となって里を抜けたイタチ。今は、暁とかいう犯罪者の塊みたいな組織に入ってるらしい。

あの夜、血に濡れたイタチがいきなり現れて、一方的に別れを告げられるとそのままボンっと煙を巻いて消えてしまった。

当然そんな別れ方で忘れられるわける訳もなくて、毎晩のようにイタチを思い出しては涙を流していたのも、もう数年前の話。

徐々に傷は癒えて、いつしかこのアルバムを開く事もなくなっていったんだった。



今は何してるの?イタチ。



きっと彼の事だから、何か理由があってあんな事をしたんだろう。今はもう、聞く術もないけれど。

何だか懐かしくなってしまって、夕暮れで少し暗くなった部屋で、ゆっくりとアルバムのページをめくる。







ただ、懐かしむ
(できる事なら、また会いたい)











.