第1話
「おはようございまーす。」
「ななしちゃん、今日もよろしくね。お部屋は302だよ。」
19時から120分、21時半から150分の予約いただいてるからね、とボードを見ながら嬉しそうに言う店長にぺこりと頭を下げて、スタッフから自分の道具を受け取り店の奥にあるエレベーターに乗って3階へと向かう。
ガタンと音がなって開いた扉の前には女の子が立っていて、お疲れ様ですと言うと舌打ちを返される。きっとこの後来る客と勘違いしたんだな。それにしても舌打ちはないでしょ。
まあ、こういう子はこの業界によくいるから仕方ないかと自己解決してその子の前を通り過ぎ、302と書かれた部屋に入ると使われた形跡がない。ああ、きっと今日は暇なんだな。予約があってよかった。
……
よし、部屋の整理は終わった。店長に予約の詳細を聞こう。スタート枠のお客様は予想がつくけど。
"はい、お疲れ様です。"
「店長、予約の詳細教えてください。」
"まず1人目は常連さんの不知火様ね。んで、2人目がご新規なんだけど…、名前聞く前に電話切られちゃってね。ごめんね。"
「そうですか…、わかりました。」
不知火様が来たら電話ください、と伝えて受話器を壁に戻す。
予想的中。スタート枠はゲンマさんだ。
初めて会ってから約2年、相変わらず週に1回のペースで来てくれる常連さん。
こういう所に来る人の中ではかなりイケメンで、遊び方もスマートなゲンマさんはあたしのお気に入りのお客様。
煙草を吸いながらゲンマさんが来るのを待つ。
するとちょうど吸い終わったタイミングで電話が鳴って、はいと受けると店長の弾んだ声が聞こえる。
"ななしちゃん、不知火様お見えになったよ。"
「わかりました。ご案内お願いします。」
よろしくねーと言われて受話器を置くと、部屋にスプレーをしてからエレベーターの前へと急ぐ。
……
「よぉななしちゃん、久しぶりだな。」
「お待ちしてましたゲンマさん。お手洗いは大丈夫ですか?」
ソープランドには各階にひとつしかトイレがなくて、エレベーターからお客様が降りると、まずこれを聞かないといけない。
大丈夫だと言うゲンマさんに笑顔を向け、じゃあ早速お部屋にと案内をする。
さあ、今日も頑張りますか。
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