第7話
ドキドキした。自分で近づいたくせに、ふと気づくとゲンマさんとの距離は10センチ程で。
襲うぞ、なんて冗談で言われたのに顔が真っ赤になって、慌ててキッチンへ逃げる。
おかしいな。2年も会ってたはずなのに、今日のゲンマさんはいつもよりかっこよく見える。
きっとプライベートでこんなに長い時間居た事ないからだ、そう思う事にして冷蔵庫から食材を出して夕飯の支度を始める。
……
「よし、出来た…。」
今日の献立は、鮭ときのこの炊き込みご飯に肉じゃが、長ねぎと卵と豆腐のお味噌汁と昨日残しておいたかぼちゃの煮物。
なんか、男ウケ狙ってます!みたいな献立になってしまったけど、まあいいか。元々食べるつもりだったメニューだしね。
「ゲンマさん、お待たせしました。」
「、んー…。…あれ、わり、寝ちゃってたみてーだ。」
「寝るならベッド使ってくれてもよかったのに…。寝起きでごはん食べられますか?」
うん、すげー腹減ったと言うゲンマさんに今持ってきますねと伝えてキッチンへ向かうと、俺も手伝うと言ってくれた。それに甘えてお願いしますと大皿を渡す。
超うまそう、ちょっと待ってなと言われて大皿を返される。何をするんだろうと思っていると、何やら忍術でも使うのか印を結び始めた。
えっ何?!何するの?!?!
思わず身構えていると、ボフンと煙を巻いて現れたのはもう1人のゲンマさん。
「何回も行ったり来たり、めんどくせーだろ?早く食いたいし。」
「…それ、忍術の無駄遣いじゃないですか。」
するとゲンマさんは早く食いてーからいいんだよとケラケラ笑っている。
3人?でごはんを一気に運んで、分身を解いてからいただきますと手を合わせる。
「…うま、やべ、超うまい。」
「ほんとですか?よかったー。あたし、誰かにごはん作る事ってあんまりないから不安で。」
うまいうまいと言いながら次々とごはんを口に運ぶゲンマさんを見て、思わず頬が緩む。可愛いなあ。
ふとおかずのお皿を見てみるとかぼちゃの煮物が異様に減っていて、向かいの小皿を見ると、そこにはたくさんのそれが取り分けてある。
「かぼちゃの煮物、好きなんですか?」
「え?ああ、そうだな。俺の1番の好物だ。」
へぇ、意外だな。男の人は甘いとか何とか言ってあまり食べないイメージがあるけど。
今日のはななしちゃんが作ったやつだから最高にうまいなとニコニコしながら言われて、また顔が赤くなる。今日1日でどんだけ赤面してんの、あたし。
……
「うまかった。ご馳走様。」
「喜んでもらえて何よりです。」
あの後、洗い物はやると言ってくれたのでお願いして、あたしはその間破れた任務服を縫い直して。
俺の裸見て興奮すんなよ?と悪戯に言うゲンマさんをしませんと一蹴すると、そんなにはっきり言うなよ、傷つくだろと言われて思わず笑ってしまう。
そして、気づけばいい時間。
ちらりと時計を見たゲンマさんは、そろそろ行くかーと伸びをしている。
「飯うまかった、ありがとな。あと任務服も。」
「いえいえ、お礼を言うのはあたしの方です。ドレス、ありがとうございました!」
「次はいつから出勤すんだ?」
「3日後です、いつも通り19時から。」
なら予約入れとくなと言いながら玄関に向かい靴を履き、じゃあな、と頭をポンと叩かれる。おやすみなさいと言えばニコッと微笑んで戸締りしっかりしろよ、この辺あぶねーからと言われて、帰る時まで紳士だななんて思いながらそれにはいと返す。
パタンとドアが閉まったのを確認してからリビングへと行って、空になったマグカップを片付けてから浴室へお湯を張りに行く。
楽しかったな、今日。
ずっとひとりで過ごしていたから、ゲンマさんが誘いに乗ってくれてとても嬉しかった。
明日は今日買い忘れた私服と化粧品を買いに行こうと決めて、お風呂の支度をする。
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