第8話


「おはようございまーす。」

「おはよう。久しぶりだねななしちゃん。」



1週間の休みが明けて、今日からまた仕事。
早速だけど、貸切で入ってるよと今日も嬉しそうな店長に誰ですかと問えば、はたけ様だねと返ってくる。
…カカシさんが貸切?まだ1回しか会った事ないのに。
意外な人物の予約に多少驚きながらも了解ですと返事をして、貸切って事は今日はゲンマさんに会えないのかとふと思う。



「じゃ、今日もよろしくね。お部屋は205使ってね。あ、外出する時は内線くれればいいからね。」

「はーい。今日もよろしくお願いします。」



エレベーター前でスタッフから道具入れを受け取って、向かいにある階段で2階へと向かう。

階段を登りきると廊下には喘ぎ声が響いていて、みんな頑張ってるなーと思いながら205に入る。
いつものように自分好みに部屋を整理して、こないだゲンマさんに買ってもらったドレスに着替えて煙草に火をつけ煙をふーっと吐く。

貸切って事は5時間だよね…。どうしよう、そんなに仲良くないけどもつかな。もしもたなかったら3回くらいプレイしよう、体力的にはキツイけど気まずいよりはまし。

よし、と意気込んで火を消すと内線が鳴って、カカシさんが来た事を知らせる。
ご案内お願いしますと言って受話器を置き、ヒールを履いて廊下へと出る。



……



"あッ、あん…や、っ!"


「…あらあら、お盛んだこと。」

「あはは、確かに。…ご予約ありがとうございます、カカシさん。」



カカシさんが2階に着くとまだ喘ぎ声は響いていて、思わず2人で苦笑い。
お手洗いは大丈夫だからねと言うカカシさんを直接部屋に案内してドアをパタンと閉じる。
久しぶりだねぇなんて言いながら前と同じように手袋やら忍具入れやらを外して、あたしはそれを受け取ってかごへ入れる。



「びっくりしました、貸切って聞いて。」

「んー、また会いたくてね。どうせなら長い時間がいいと思ってさ。」



外出できるんでしょ?ご飯食べに行こうかと言いながらベストに手をかけて、さっそく着替えをしている。
あたしも着替えようと私服に手を伸ばすとそれを止められて、振り向くとそこにはニコニコ顔のカカシさん。
何でしょうと問いかければそのままの格好でいいじゃないと言われて、おそらくカカシさんの私服であろうカーディガンを渡される。



「これだけ羽織って行けば大丈夫でしょ。」

「もしかして、そういうプレイですか?」

「まあね。この辺の飲食店は水商売の人達がほとんどだし、別に変じゃないでしょ?」

「…カカシさん、結構変態なんですね。」



かっこいいのにと付け足せば顔は関係ないでしょと頭をコツンと叩かれて、まあ、この格好の方が面白いからねと意味ありげに含み笑いをする。
はて何の事だろうと疑問に思うけれど、まあいいかと深く考えるのはやめにして渡されたカーディガンを羽織る。



……



「それじゃ、行ってきまーす。」

「はーい、気をつけてね。」



店の外に出て、露出して出る事を許可した自分を殴りたくなる。
今日はお祭りもイベントも何もない日なのに街は人で賑わっていて、何故ですかねと聞けば今日は色んなところで飲み会の話を聞いたよと答えが返ってきた。なるほど、だからか。
たまに視線を感じてその先を見ると、欲望丸出しのおじさんに体を舐め回すように見られていて、何とも言えない気持ちになりながら街を歩く。

着いた、ここだよと看板を指さされて顔を上げると、そこは雰囲気も料理も評判のいい居酒屋。
行こうかと手を引かれて店に入ると、愛想の良さそうなお姉さんが笑顔で案内してくれる。その間も手は繋がれたままで、広い廊下を歩いていると、前から歩いてきた人はあたしのよく知っている人。



「おーカカシ。お前もここで飯か、よ…、」

「ゲンマ。そう、デート。」



あたしを見て驚いたゲンマさんは、咥えた千本をぽろりと地面に落とす。
なーに、知り合い?というカカシさんにあーまあなと曖昧な答えを返して、急いで千本を拾うと、じゃあなと足早にその場を去って行ってしまう。
ゲンマさんとカカシさんが知り合いだったなんて知らなかったあたしは、頭が混乱して思わずフリーズする。

え?じゃあなに?ゲンマさんとカカシさんは穴兄弟…って違う、そうじゃなくて。

つまり、あたしは2回目のお客様との外出を常連のお客様に見られたって事?…それ、やばくない?
もちろんプライベートで会ってる訳じゃなくてこれは仕事なんだけど、せっかくあたしを気に入ってくれている人がこういう現場を見たらいい気はしないはず。

やばいどうしようと考えていると、カカシさんが大丈夫?とあたしの顔の前で手をひらひらとさせていて、はっとして大丈夫ですと返す。



「ならいいけど。…行こっか。」

「はい、」



無理矢理笑顔を作ってカカシさんを見上げると手を更にギュッと握られて、個室へと足を進める。












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