第14話
「、ななしちゃん…っ、」
「っやあ…ッ!だめ…、」
「は…っ、出すよッ!」
……
「はい、これ。」
「ありがとうございます…。」
「急にごめんね。またお店で会った時に呼ぶよ。」
「…はい、」
じゃあまたねと言われて、はいと返してから先にホテルを出る。ふぅとひとつため息をついて足早に帰宅すると、真っ先に浴室に向かってシャワーの蛇口をひねる。
………おかしい。
この仕事はもう3年近くやっていて、軽蔑されやすい仕事だけどあたしは結構楽しかった。お給料は申し分ないし、お客様もスタッフも仲が良い。今日はたまたま街を歩いていたらお客様に会って、お店やってないなら個人的にどう?なんて誘われた。お店自体厳しくないし、よく指名してくれている人だったからまあいいかと思ってそれを承諾した。
裸になって首筋に舌が這った時、快感とは違う鳥肌が全身を覆って、逃げ出したいなんて思った自分に驚いた。今まで、こんな事なかったのに。
なんとか耐えて終わらせたものの、全身を這いずり回った舌の感触と荒い息遣いがずっと自分の体に残ってるような気がして、早く帰りたい一心だった。
「ふー…、」
しつこいくらいに体を洗って、ようやくお風呂場を出る。ボディークリームを塗るために自分の肌を見ると、力を入れすぎたのか全身真っ赤になっていて、所々皮が剥けて血が出ている。
全身を保湿して部屋着に着替えリビングへ行くと、タイミングよくインターホンが鳴る。はーいと返事をして扉を開けると、そこには全身血だらけのカカシさんが立っていた。
「えっ、ちょっ…!どうしたんですか?!」
「ななしちゃんごめん…シャワー、借りてもいい?…任務終わりに風呂入ろうと思ったら、壊れてて…。」
「着替え、持ってきてください!お風呂ためておくので!」
テンパりながらもそういうと、ありがとうとふにゃりと笑うカカシさんはいつもと違って顔色が悪い。きっと大変な任務だったんだろう。着替えを持ってもう一度現れたカカシさんをすぐにお風呂場に向かわせて、あたしはベットリと血のついた任務服をぬるま湯に浸ける。
しばらくして出てきたカカシさんはいつも通りの顔色に戻っていて、任務服、洗ってくれるの?なんて少々驚いた顔をする。勝手にごめんなさいと謝ればむしろありがとうと返ってきて、あたしの横にカカシさんが座る。
「今飲み物出しますね。ちょっと待っててください。」
「…すぐ帰んなくてもいいの?」
「あ、帰りたかったですか…?」
「いや…、1人で居たくないと思ってたから…。ありがとう。」
あたしも、今日は1人でいるの嫌だったんです。と困ったように言えば、そっかと優しい声で返ってきて、飲み物入れるのは俺がやるよと言ってくれた。それを素直にお願いして、あたしは任務服を洗濯するために洗面所へ向かう。
……
「はー…、あったかい。最近、夜寒いですよね。」
「そうだねぇ。野宿の任務が辛くなってきたよ。」
「大変そうだなー…カカシさんの班の子は大丈夫ですか?」
あいつらはまだまだ平気だよ、なんて笑いながら話すカカシさんは班の子達を思い出しているのか、その表情はまさに先生という感じ。たまに聞く7班での任務の話はとても面白い。メンバーの中には九尾の人柱力であるナルトくんと、うちは一族の生き残りなんて言われてる子がいるらしい。忍ではないあたしでも知っているその2人は里では厄介者扱いというか、うちはの子に関しては腫れ物扱いというか…。そんな2人をまとめて面倒見ているカカシさんは凄いなと改めて思う。
「そういえば、ななしちゃんの話をナルトがしてたよ。」
「え?…あー、よく一楽で会うんです。最初は1人で寂しそうに店の外にいて、たまにテウチさんがラーメン食べさせてあげてたみたいなんですけど…。」
「ふーん…それで?」
「毎日泣きそうな顔で一楽の前にいるナルトくんに、気づいたら話しかけてて。はじめは警戒されてたんですけど、今ではもう姉ちゃん姉ちゃんってくっついて来てくれるんです。」
一楽以外の場所ではあまり会わないけど、会えば姉ちゃん!と寄ってきてくれるナルトくんは可愛い弟という感じで、ついついラーメン食べてく?なんて誘ってしまう。
一楽はあたしにとってすごく大事な場所なんです、と笑って言えばカカシさんはニコニコしながらそれを聞いていて、なんだか心がぽかぽかあったまるような気がした。
「へぇ、ナルトがねぇ…。」
「はい、最近は3人で一楽に居たりもして。…仲間ができたんだなーって嬉しくなります。」
「、そっか。」
「あ、こないだカカシさんのマスクの下が見たいとか話してましたよ。」
「……あいつらも懲りないねぇ。」
その反応はまたかと言いたそうで、今までにも何回かあったんだなと察するのは簡単だった。おかしくて思わず笑ってしまうと、カカシさんもそれにつられて笑顔を見せる。
ふと時計を見ると、もういい時間。あたしはまだまだ休みだけど、カカシさんは任務があるんじゃないのかな?そう思って聞くと、明日は休みだと言う。もうちょっと居てもいい?なんて弱々しく聞くカカシさんにもちろんです、と答えると満足そうに笑って、ありがとうと優しい声で言われる。
ピーピーと洗濯完了の音が鳴って、洗面所へと向かう。俺もやる、と言ってくれたカカシさんに素直に半分預けると、テキパキとハンガーにかけて干していく。リビングの一角に綺麗に干された洗濯物を乾かすために、エアコンの切り替えボタンを押す。部屋干しでごめんなさいと謝れば俺はいつもそうだから気にしないでと返ってくる。昼間だったら外に干したんだけどな。
「煙草、吸ってもいい?」
「もちろん。これ、どうぞ。」
自然と、煙草を咥える口元に目がいってしまう。薄くて、綺麗な形をしていて、色気のあるホクロがあって。なんて完璧なんだろう。
「………見過ぎ。」
「へっ?あ、ごめんなさい…!」
「いいけどね。……ななしちゃん、」
「…カカシさん……、近い、です…。」
近い方がよく見えるでしょ?なんて悪戯に笑われて顔が真っ赤に染まる。横目で半分くらいしか吸っていない煙草を消して、その手で顎をクイっと上げられる。そのまま綺麗な瞳に見つめられて、恥ずかしくなって目をそらすと、チュッと可愛らしい音を立てて唇が触れる。
「……カカシさん、」
離れた唇はまた近づいて、今度は深いキスが降る。
何でだろう、さっきの人はあんなに嫌だと思ったのに、カカシさんに触れられても嫌じゃない。むしろ、この先を期待してしまっている自分がいる。
どうしてそう思うのか自分でもわからずに、ただただ夢中になってカカシさんの舌を追いかける。
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