爛れた関係
「ななし。起きろ、今日任務だろ。」
「んー…あと5分だけ…」
「ったく…、遅刻するっすよ。」
やだ、まだ寝るというななしを無理矢理起こす。どうもこいつは朝が苦手らしい。
「…おはよ。シカマル。」
「はよっす。早く準備しろよ、まじで遅刻すんぞ。」
「それはまずい。でも眠い。」
ふぁ、とひとつあくびをしてから洗面台に向かうななしを横目で見つつ、俺はキッチンでコーヒーを淹れる。
「シカマルは何時から?」
「俺は2時だ。あんたは1時からだろ?」
「うん、そう。…あ、ここから直接行く?」
顔を洗って目が覚めたらしいななしは、コーヒーありがとう、と言ってひと口飲んだ後、リビングのテーブルで化粧をしながら尋ねる。
「あー…、そうだな。必要なもんも揃ってるし。」
「じゃあ鍵置いてくね。…最近お泊まりばっかりだから、そろそろシカクさんに怒られちゃうかもね。」
「…あんたが泊まってって頼むからだろ。それにそこまで過保護じゃねーよ、うちは。」
「ふふ、ならいいけど。」
あ、やばい冗談抜きで遅刻しそう。と慌てて準備の手を早めるななしを頬杖をつきながら観察する。
長い髪をあっという間にてっぺんに結んで、うわ、寝癖すごいとか言いながらくるくる団子にしていく。その後は寝間着を恥ずかしげもなく一気に脱いで任務服に着替える。…毎回思うが、こいつの任務服は必要以上に露出が高い。上はタートルネックだが腕は丸出し、下はショーパン。同じような服を着た忍を見ても何も思わねぇが、こいつはやたら色気がある気がするのは年上だからなのか、元々持ってる雰囲気なのか。
「シカマル、見過ぎ。穴あいちゃう。」
「…冗談言ってねーで、準備終わったなら早く行けよ。」
「つまんないのー。じゃあ行ってきます。鍵、ポストに入れといてね。」
パタン、と玄関のドアが閉まって、静かになった部屋にため息をひとつ漏らす。
夜はあんなに甘えてよがってくるくせに、朝になればそれが嘘だったみたいに淡泊になって、まるで幻術にでもかけられてたんじゃねーかと思う。まあ、爛れた関係ならそんなもんなのかも知れねーが。
飲み終わったカップを洗ってから、自分も任務の支度をする。
今日は10班での任務だ。俺の家とは真逆にあるななしの家から向かえばいのあたりが色々聞いてきそうだ、めんどくせぇ。そんな事を思いながら、ななしの家をあとにする。
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