落歌生

完熟

心の境目、薄皮一枚
混じり合った汗
熟せば甘い
その果実は膿のように
軈て私を腐らせる
いいものじゃないわ、恋なんて
ぐじゅぐじゅの想いをありったけ

赤くまどろむ醜悪の噺
縁日には到底出せないわ
見切り品です、いつだって
瘡蓋と傷んだ林檎
桃と李は恋の果て
李も桃も愛の果て
チェリーボーイはふたつまで
手練手管、酒池肉林
慣熟したとて青二才
一瞬の過失が果実を潰す
時期を弁えろよという話
三月兎が大人ぶるなよ

交配⇔荒廃
毒を食らわば最期まで
銀が傷むほどの執心を
切られて潰れてそして食われる
過重100%
重いと書いて想いと読むの
熟しているか腐っているか
ひとつは心、もうひとつは
私を甘く煮出してくれる
発酵、熟成、完熟、腐敗
人なんてだいたいそんなもん
人も草木も変わらないわね

愛も恋もすったもんだも大変で、一歩違えば犯罪で。けれども他者を求める本能が、刹那の甘美を求めてる。喉が渇くと心が叫ぶ。だからそうなる前に、欲を満たしてその場を凌ぐ。水も愛も焦らされて、そうして人は恋に堕つ。
いつか、至上の刹那が注がれる日を願いながら。
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