※本誌(92〜93話)ネタバレ注意


「八木さんはいつだってみんなのヒーローですけど、八木さんが辛いときは、誰に頼るんですか」
独り言のような、問いのような口から零れ出たそれに彼は窪んだ目元から見える瞳を大きく開いて、そんなこと言われるとはと言わんばかりの驚いた顔をしていた。
でもその後は、いつものような、当たり前のことを話す時みたいな笑顔で言うんだ。

「私はヒーローだからね」
「…あの、そうじゃなくて、」
「んー…強いて言うなら、」

君が笑顔でおかえりって言ってくれるだけで、私は救われているんだよ。君が待っているって考えるだけで、何よりも頑張れるからね。
そんな優しく甘い言葉を言われれば、単純で小心者な私は簡単に絆されてしまって、会話を遮られたことも、話題を少し逸らされたことも触れることなんて出来なくなるのだ。
「…じゃあ私、いつだってここで八木さんの帰りを待ってるから、絶対に帰ってきてくださいね」


あれはいつ交わした言葉だったかな。つい先日のようにも、遠い昔のようにも感じる。
画面越しに見えるあの人は、一部の人しか知らない痩せ細った姿で、それでも尚人々を、世界を、平和を守らんと見るからに今までの比ではないであろう敵の前に君臨していた。
本当は助けに行きたい。連れ帰って何処か遠くに逃げてしまいたい。敵を倒すのも、人を守ることも捨てて、貴方が無事なら、生きてくれるならそれで良いと言ってしまいたい。けれど彼はヒーローで、世間だけでなく彼自身もそれを望んではいないのだ。
だから私は今日も、潰れてしまいそうな心臓も、瞳から溢れ落ちる雫も見ない振りをして、彼の帰りを待つのだ。

「…絶対に、帰ってきてください」


音にならない悲鳴をあげる
title by 彼女の為に泣いた

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