陽が傾き始めて橙色の空になりつつある放課後、俺は今夢見てんじゃねえかとか、そうじゃなかったら幸せ過ぎて死ぬんじゃねえかってずっと考えてしまっていた。

何故なら、入試のときに一目惚れしてからずっと想っていた女の子に手を引かれて人気の少ない方へ連れて行かれているのだ。いやマジでこれ夢じゃないよね?大丈夫?やばくね?


俺の手を引きつつ先を歩いているみょうじは照れているのかなんなのか、心なしか頬は赤く染まっているし、繋いだ手は俺なんかと全然違って小さくてふにふにと柔らかくて、正直この手の感覚だけで俺死ぬんじゃないかなって本気で思う。

でも1番気になるのはそんなこと(いや他のも十分大事なんだけど)なんかより、今彼女が何処に向かっているのかだった。


「(だってこっちの方向って使われてない教室とかしか…)な、なぁみょうじ。これ今俺らどこ向かってんの…?」
「…あ、う……ひ、みつ」


照れ顔からの"ひみつ"いただきました〜〜!!!はいマジ可愛い。もう俺こんなんなら何処連れられてもいいわ。つーか2人きりで密室とかそういうこと…?期待していいん?


「…上鳴くん、あのさ、」
「ん?どしたんみょうじ?」
「あの、もうすぐで着くんだけどね、あの……怒らないで欲しいなって言うか、き、嫌われたくないな…って」
「…え、ちょ、それどういうこと?」

怒る?嫌う???我ながらみょうじにぞっこんな俺がそういった行為をするとは考えられないが(何故なら俺は惚れた女の子にめちゃくちゃ弱いからだ。だってみょうじ本当に可愛いし。)、そう言うくらいだから俺が怒ったり、ましてや嫌うかもしれないことをする可能性があるってことだろうか…?


「(もしかして押し倒されたりしちゃうフラグ…!?)」
「あ、着いたよ。あの…先に入ってもらっても、良いかな…?」
「え!?あ、お、おう!」


こんな学校の隅の空き教室で、これからみょうじに何をされるんだろうかとそわそわしていた俺はすっかり忘れてしまっていたのだ。クラスの奴らが今日はやけに解散が早かったこととか、今日が一体何月何日なのかとか。

ガラッー

と、音を立てながら雄英特有の大きなドアを開けた先で感じたのは、真っ白になった視界と顔面に感じるベチャッとぶつかった物体、それから、一瞬だけ見えた満面の笑みの切島の姿だった。

「……………は?」
「…せーの!上鳴くん、」

お誕生日おめでとう!!!

なんていうみんなの声と共にクラッカーの音が響いた。ああそっか、最近いろんなことがあってすっかり忘れてたけど、今日、俺の誕生日か…。


「改めて誕生日おめでとうな!上鳴!おめェこういうサプライズ好きそうだから相澤先生にも頼んで教室借りて、みんなで協力したんだぜ!」
「ちなみに顔面ケーキはウチと瀬呂の案だよ。見事に引っかかってくれてほんと笑えたわ!」

顔面に着いた生クリームたちを拭っているとみんな(まさかの爆豪までいて本気でビビった。無理矢理連れて来られたっぽいけど)が思い思いに祝ってくれた。まさか相澤先生まで協力してくれていたのには驚きだった。まあ切島辺りがごり押ししたんだろうけどよ。

「なまえもお疲れさま!良く連れてきてくれたね〜!」
「はあ〜ほんと緊張した…こういうの慣れてないからすぐバレるんじゃないかってドキドキしちゃった…!上鳴くん、ごめんね」
「や、むしろありがとな!なんかこうやってサプライズでみんなに祝ってもらえたのめちゃくちゃ嬉しいよ。顔面ケーキはもう勘弁だけど」


みょうじになんかされるんじゃ、なんて期待してた俺は本当に馬鹿だなってちょっと恥ずかしくなったけど、好きな女の子やクラスのみんなにこうやって祝ってもらえて、ああ俺って本当に幸せモンだなあなんて心から思えた。

君ありて幸福
happybirthday!Denki Kaminari

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