※ほんのり百合
8月1日。
今日はウチにとって年に一度の、何よりも大切な日だ。
「お、耳郎なんか今日機嫌いーな?」
「ん、まーね」
「耳郎ちゃん今日誕生日だもんね!おめでと〜!」
「ありがと」
そう、今日は誕生日なのだ。
お陰で朝から家族はもちろんクラスのみんなや中学の時の友達まで、たくさんの人からお祝いの言葉やプレゼントを貰った。でも、それ以上に楽しみで大切な予定があった。
「(…早く、会いたいな)」
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「では、また明日」
「耳郎ちゃんほんとにお誕生日おめでと〜!また明日ね!」
「ん、みんなありがと。またね」
そんな挨拶を交わしてみんなと別れた後、全速力で家まで走って帰った。そこまで遠くはない自宅だけどいつもよりとてもとても遠く感じて、何kmも走ってる気持ちだった。今日ほど家がもっと学校の近くだったら良かったのにと思ったことはないだろう。
「はっ…は、」
走って走って、家の近くになったところで、玄関前に誰よりも会いたかった人影が見えた。
「ーっなまえ!」
「響香ちゃん!おかえりなさい」
そう言いながらふにゃりと微笑む彼女を見て、こちらまで思わず頬が緩んでしまった。ああ、会いたかった。
ウチより一回りくらい小さなその体を思い切り抱き締めながらそんな幸せを噛み締めていた。
彼女ーなまえはウチの従姉妹で、小さな時から一緒に過ごしていた。小さくて可愛くて、ふわふわとしたウチと真逆な女の子らしい女の子。なのに芯はとてもしっかりとしていて。そんな彼女がウチは大好きで、憧れだった。
でもいつからかその"好き"は家族や友達に向けるものから変わっていって、ウチの気持ちは特殊なんだなってことも理解した。だからこの気持ちは誰にも言うつもりはない。感情が大きく膨れ上がった今も、ずっと。
「ふふ、響香ちゃん、お誕生日おめでとう」
「…ん、ありがとう。今年もなまえに祝ってもらえて、めちゃくちゃ嬉しいよ。」
なまえは中学に上がる前に、叔父さんの仕事の都合で遠くへ引っ越してしまった。元々個性的にも性格的にもヒーロー向きではなかった彼女は高校も雄英に志望することもなく、今も向こうの学校に通っている。そんな彼女とウチは当然ながら会う機会もグンと減ってしまい、親戚の集まりでくらいしか会わなくなってしまったのだ。ー今日、この日を除いて。
「私も、毎年響香ちゃんに会いに来れて、お誕生日お祝い出来て幸せだよ。」
抱き締めているお陰で顔は見えないけれど、きっといつもの柔らかい笑顔でそう言ってるんだろうなって考えただけで胸が温かくなった。なまえもウチと同じように、会えること嬉しく思ってくれてるんだ。
「来年も再来年も、この先もずっとこうして響香ちゃんのお誕生日祝いたいなあ」
なまえのそんな言葉が、ウチにとっては何よりもずっと嬉しくて。この想いが伝わらなくても、叶わなくても、来年も再来年も、これからもずっとなまえとこうして過ごせるのなら、きっと幸せだなって思えた。
ねえ、なまえ
「響香ちゃん、」
大好きだよ。
オシロイバナと共に咲く
happy birthday!Kyoka Jiro
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